Washington Files

2019年3月6日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(2)下院歳入委員会(リチャード・ニール委員長)

 議会各関連委員会の中で、独自の判断で、調査対象重要人物の税申告内容について財務省に閲覧請求できる唯一の委員会として強大な権限を持つ。

 このため、ニール委員長はじめ委員会幹部は、コーエン証言を受け、トランプ氏の過去の税申告関連書類提出をムニューチン財務長官に対して近く正式に要求する考えを示している。同長官がこれに応じるかどうかは今の時点では依然不明だが、提出を拒否した場合、ウィーゼルバーグ氏ら財務内容に精通した側近を委員会聴聞会に喚問、直接厳しく問いただす選択肢も残されている。

1000万ドルという巨額の税還付

 一方、先の監視・改革委員会での証言の中でコーエン氏は、トランプ氏が去る2008年当時、内国歳入庁(IRS、日本の国税庁に相当)から1000万ドルという巨額の税還付を受けたことを誇らしげに語ったことを明らかにした。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、米国税法では、これほどの多額の税還付の場合、IRSは議会上下両院合同課税委員会(Joint Committee on Taxation=JCT)による検閲を受けることが義務付けられている。従って、その後も同様に巨額の税還付が行われたケースについては、検閲のたびごとにIRSからJCT宛てに関連書類が提出されたとみられるという。

 もしそうだすれば、トランプ氏の納税内容に関してすでにある程度の資料が議会の手に渡っている可能性が高く、ニール委員長としても、かりに財務長官が納税申告内容の提出を拒否したとしても、JCTファイルを再点検することによって、トランプ氏のこれまでの納税申告実態の概要を把握することができる。あるいは現時点ですでに、これらの内容を把握している可能性も否定できない。

(3)下院情報活動委員会(アダム・シフ委員長)

 同委員会は監視・改革委員会公聴会に続き翌28日、コーエン氏を呼び、秘密聴聞会を開いた。そこでの同氏の新たな証言内容は明らかにされていないが、シフ委員長は前日の公聴会終了後、一部メディアのインタビューに応じた中で、

 「もしコーエン氏が述べたことが事実だとすれば、トランプ大統領は在任中に、スキャンダルもみ消しのために口封じ金を支払うという刑事犯罪行為をしたことになり、極めて重大な問題だ」

 「彼の今回の証言は、これまで伝えられた様々な話について事実は事実として認め、そうでない場合は正直に否定した。その意味で十分信頼に値する内容だった。とくに大統領から多額の口止め料が直接支払われた事実を証拠資料提出によって明らかにしたことは、選挙資金規制法に抵触する行為であり、驚くべきことだ」

 さらにシフ委員長は、同委員会としての今後のトランプ疑惑解明の焦点のひとつとして、大統領が就任後の2017年6月まで直接関与していたとされるモスクワ市内の「トランプ・タワー」建設計画を挙げた上で、

 「コーエン氏も公聴会で、同プロジェクのめ進捗状況についてトランプ氏と個人的に何度も話し合ったことを認めており、われわれとしても今後、この事業に関わって来た数多くの証人を喚問し、事業推進の支援を仰ぐ目的でクレムリン側のどの人物とコンタクトがあったかなどについても真相に迫りたい」と語り、重要証人の一人がウィーゼルバーグ氏であることを認めた。

 また委員会メンバーの一人、ジェラルド・コナリー議員は「コーエン氏は証言を通じ、真相解明のカギを握る重要人物としてウィーゼルバーグ氏ら『トランプ・オーガニゼーション』の具体的名前を挙げたほか、トランプ氏の納税申告書類閲覧の重要性を指摘するなど、われわれのために大変豪勢な“10品料理コース”をテーブルに用意してくれた。今後、委員会として1品ずつ吟味していくことになる」と意味深長なコメントをしている。

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