ダイバーシティの先にある「共生社会」
――ウィルチェアーラグビーのワールドチャレンジ2019というのは、日本が初めてではなく、ラグビーW杯2015イングランド大会のときにも同時に開催されたと聞いていますが、日本ではどういった経緯で開催が決まったのでしょうか。
中竹:2015年はラグビーとウィルチェアーラグビーがしっかりタッグを組んで開催したということではないらしく、ラグビーW杯という世界的規模の大会に合わせてワールドチャレンジを開催したようです。
今回も最初はそれに近かったのですが、私が双方に携わっていますし、ウィルチェアーラグビーのワールドチャレンジの実行委員でもありますので、両者が何かしらお互いで協力し合うことができないかを検討しています。
――来年2020年には日本でオリンピック・パラリンピックが開催されますので、今回の同時開催というのはとても意義のある取り組みになりますね。
中竹:今後より良い社会に向かっていく中で「ダイバーシティ」は避けては通れません。その先に共生社会があります。それはスポーツでも同じことが言えると思うんです。
ラグビーとウィルチェアーラグビー、両者の競技性はまったく異なるものですが、一緒にやっていくことに大きな意義があると思っています。
日本ウィルチェアーラグビー連盟は今回の大会で大きな理念を謳っています。それは「共生社会の実現」です。
この意味は、ウィルチェアーラグビーの認知度を高めようとか、観客をたくさん集めようとか、そういったことを目指したものではなく、あくまでも共生社会実現のためのツールとしてウィルチェアーラグビーを活用していきましょう、という考えです。
今回はこうした上位概念を謳っている大会になります。
とはいえ、ウィルチェアーラグビーの認知度はまだ低いので、まず大勢のラグビーファンにウィルチェアーラグビーという競技のことを知ってもらい、興味を持ってもらえるきっかけにしたいと思っています。
それにはお互いが協力する形でイベントを開催したり、何かしらの形で競技を観て魅力を感じてもらえる取り組みをしなければなりませんが、何よりもお互いが応援し合える関係性を作ることが大事です。まずはラグビーファンへのPRより先にラグビー選手自身に応援してもらいたいと思っていますし、ウィルチェアーラグビーの方でもラグビーを応援したいと思っています。
――ウィルチェアーラグビーのワールドチャレンジは共生社会実現に向けての取り組みとのことですが、大会としてのゴールのようなものはありますか。
中竹:ワールドチャレンジのゴールは勝ち負けという結果ではありません。
競技の魅力を伝え、選手だけではなく、そこにいろいろな方たちが関わって、共生社会が生まれるきっかけになればいいと考えています。また、将来的には、パラスポーツを発展させる一つのモデルケースに成りたいとも思っています。
更にいうと、パラスポーツそのものの魅力を伝えて、健常者とか障害者という分け隔てのないひとつの競技として見て楽しめるような社会になってほしいと思っています。