2023年1月28日(土)

中東を読み解く

2019年3月14日

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試されるトランプ戦略 

 トランプ大統領の軍事・安全保障政策は「中東・アフリカに投入してきた兵力を中国やロシア向けに転換する」ということに尽きる。これまで軍事戦略の中核になってきたテロとの戦いが、ISの壊滅で一段落したという現状認識もあるが、基本的には「誰も名前を聞いたことのない国に軍隊を派遣するのは馬鹿げている」というトランプ氏独特の考えが反映されている。

 こうした考えに沿って、シリアやアフガニスタン、アフリカからの派遣軍縮小が決まった。シリアの2200人の駐留部隊は400人にまで削減。アフガニスタンの1万4000人は1年以内に半減させ、5年以内に完全撤退させる計画だ。アフリカの駐留部隊も25%の削減を実施する見通し。

 だが、こうしたトランプ大統領の戦略は本当の脅威を軽視したもの、との批判が強い。現在の脅威は中国やロシアとの間でのような「国対国」の対決よりも、テロやゲリラ組織との「非対称戦争」の方が依然大きいという主張である。確かにシリアやイラクのISは形の上ではほぼ壊滅したが、ボーテル米中央軍司令官が議会で証言したように「米軍が撤退すれば、ISはすぐに復活する」との恐れは現実的だ。

 こうしたトランプ大統領の政策が試される危機が近い。シリア東部のIS掃討作戦が来週にも終了する見通しの中、北西部イドリブ県での緊張が高まり、ロシア軍とシリア政府軍の総攻撃が始まる可能性が近づいているからだ。イドリブ県は今年に入って、米国も敵視する国際テロ組織アルカイダ系の「旧ヌスラ戦線」がほぼ制圧した。同組織の戦闘員は約3万人ともいわれる。

 シリア軍とロシア軍の総攻撃が始まった時、米軍はこれを見守るのか、自らも参戦して空爆に加わるのか、トランプ大統領は決断を迫られることになる。「この総攻撃はテロとの戦いだけではなく、シリアの戦後秩序をどうするのかにも密接に絡んでいる。大統領の出方が試される」(アナリスト)。その時期は切迫している。

  
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