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2019年3月17日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

「物証」は十分か?

 政治的思惑、判断に加え、トランプ氏を弾劾するに足る有力な証拠が示されうるのかという、そもそもの客観的疑問もなおくすぶり続けている。

 2月末の第2回米朝首脳会談と時を同じくして米議会で行われたトランプ氏の元顧問弁護士、マイケル・コーエン氏による証言は弾劾派を勢いづけた。

 コーエン氏によると、〝ロシア・ゲート〟に関連して、16年の大統領選の最中、ロシアがハッキングで入手したヒラリー・クリントン候補(民主党)のメール暴露をトランプ氏は事前に知っていたと証言。トランプ氏の長男が16年6月ロシア側と接触した際、父子の間で打ち合わせがなされていたことも明らかにされた。不倫相手の元ポルノ女優に、トランプ氏が1400万円もの口止め料を支払った際、コーエン氏が一時立て替え、返済のためのトランプ氏のサイン入りの小切手が〝証拠〟として提出された。

 しかし、これらが弾劾に追い込むための決め手になり得るのか。

 クリントン氏の場合、ホワイトハウスのインターン生だった若い女性との関係を、判事の前の宣誓供述で否定したこと(偽証)と、女性にウソの供述をするよう働きかけたこと(偽証の教唆)が訴追理由だった。この時は女性の告白テープという物証があったが、トランプ氏に関しては、いまのところそうした証拠は示されていない。

注視すべきはリベラル新人議員

 ただ、トランプ大統領が弾劾を完全に免れたかというとそうとばかりはいえない。

 トランプ疑惑を捜査しているミュラー特別検察官(FBI元長官)の捜査報告書が近く議会に提出されるが、どのような内容になるか。ロシア・ゲートへの大統領関与を示す明確な証拠が含まれていれば、「反逆、収賄、反国家的な犯罪、高度の犯罪と非行」という合衆国憲法の大統領弾劾規定を満たす。それでも弾劾訴追を見送れば、「正義に反する」という批判が民主党に浴びせられることになろう。

 もうひと注視すべきは、昨年11月の中間選挙で当選してきた下院民主党新人議員の動向だ。今回、民主党は下院で改選前から40議席増の235議席を獲得、過半数を奪還した(総議席435)。

 新人議員は67人にのぼるが、中には、過去最年少の29歳、急進左派といわれるアレクサンドリア・オカシオコルテス議員(ニューヨーク州)はじめ、初のパレスチナ系のラシダ・タリーブ議員(ミシガン州)、8歳の時、内戦下のソマリアを脱出してきたイルハン・オマル議員(ミネソタ州)ら多彩な顔ぶれがそろう。リベラル色が強いこれら新人議員の間では、弾劾訴追決議案を提出しようと動きがすでにとりざたされている。

 こうした議員の動きが活発化、現在弾劾賛成、反対が拮抗している世論調査が、それに呼応して「賛成」へと流れが変化した場合、民主党指導部に党内を押さえることができるか。

 トランプ大統領はまだまだ枕を高くして眠れないだろう。

  
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