コカイン世界最大生産地コロンビアの現場から

2019年4月11日

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柴田大輔 (しばた・だいすけ)

フォトジャーナリスト

日本芸術専門学校卒業後、フリーランスのフォトジャーナリストとして取材・報告活動を始める。2004年から1年間、ラテンアメリカ13か国を旅し、現地で出会った多様な風土と人々の生活に惹かれ、コロンビアを中心にメキシコ、ニカラグア、ペルーで住民運動や日常生活を取材し続けている。

コカ栽培でやっと買えたテレビ、冷蔵庫、ガスコンロ

 彼は約1ヘクタールの農地でコカを栽培している。3カ月に一度のペースで収穫するコカの葉は、農地にある小屋でペースト状に加工する。そうすることで、葉の状態で売るよりも販売価格が格段に上がるのだ。加工後はボール状にまとめて町に住む仲買人に売り渡す。バッグに入る大きさになるため持ち運びに手間がかからない。この「運びやすさ」は、大型輸送手段を持たない山の人々にとって大きな魅力の一つでもある。

コカの葉を収穫後に精製し加工する。一回の収穫でこのボールひとつ分になる

 コカはどの程度の稼ぎになるのか。内訳を見ていきたい。金額は2018年6月時点のものとする。

 オスカルが一度の収穫で得られる葉を加工したペーストの販売価格は25万円前後。そこから収穫を手伝う人への人件費、加工に必要な薬品代を差し引くと、彼の手元におよそ13万円が残る。これを3で割って1カ月あたりにすると、4万数千円ほどになる。コロンビアの最低賃金が3万円ほどであることを考えると、得られる収入の規模がわかる。ただ、彼の土地は栽培に適した環境が整っているため収量は多いが、最低賃金に届かない農家も多いということを付け加えたい。

 以前は難しかった額の現金収入をコカによって得たことで、生活は大きく変化した。

 「私はコカを作ることで、ようやく『人並み』の生活を手に入れることができたんです」

 オスカルはそう言葉に力を込める。彼の家には、テレビ、冷蔵庫、ガズコンロなど、町で暮らす人々が「普通」に手にするものが並んでいる。またこの収入で子どもの学校に必要なものを買い、怪我や病気をすれば病院にも行く。かつては持つことができなかった「人並み」で「普通」の生活を、コカによって手にすることができたのだ。

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