Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年4月19日

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 幸いなことに、その後の作品も多くの方にご覧いただけていますが、作品製作に当たって、チーム作りは特に重視しています。例えば、僕は毎回、自分の考えに対してネガティブなことをよく言う現場プロデューサーと一緒に仕事をします。彼はかなりしつこく、僕が論破したつもりでも、また蒸し返して文句を言ってくるため、腹が立つことも多いですが、彼のおかげで、「そういう目線で観る人もいるのか」と視野が広がり、作品に厚みが出ます。

 折り合いがつかず自分が最終的に当初の案を通したとしても、それは自分の中で絶対に外せない部分ということであり、アイデアの輪郭がよりくっきりと見えるようにもなります。間違いなく、彼無しでヒット作は生まれなかったと思います。

 また、他の全てのスタッフも自由に意見が言えるような雰囲気を作ることを意識しています。特に新人スタッフには、撮影したシーンの感想をよく聞くようにしています。それは、彼らの方がお客さんにより近い立場にいるからです。彼らの表情を見ていれば、食いつきの良いシーンとそうでないシーンはすぐに分かります。ダメ出しを聞くために、反応の悪かったスタッフをあえて選んで感想を聞いています。面白くないと言われるのは正直辛(つら)いですが(笑)。

 今風のことをやろうとすると、何がイケてて何がダサいのか、何に感動するかということを自分だけで考えるのは危険で、むしろ教えを乞う立場です。シナリオ自体も、よく若い子たちに読んでもらい、その反応を参考にして公開前の予告映像で流すシーンを検討することもあります。

 こうして、いろいろな意見を受け入れながら作品を作っていくので、完成後には、どのシーンが誰の案を採用したのかも分からなくなっています。考える脳みそはたくさんあるに越したことはありません。凝り固まった人になった瞬間に終わりだと思っています。

 今後も、老若男女問わずいろいろな人が面白いと思えるような作品を作ることを意識して取り組んでいきたいです。堅苦しく観るのではなく、エンターテインメントとして楽しんでもらえたらいいなと思います。そして、映画を観終わった帰り際に、何か1つでもいいので心に残るものを感じてもらえれば嬉しいです。

 次の世代の人たちには、新たなアイデアや技術を使ってヒット作をどんどん生み出し、映画産業を盛り上げていってほしいと思いますが、今の日本の映画業界ではクリエイターの「やりがい搾取」という問題が蔓延(まんえん)しているように思います。好きなことをやっているのだから悪い条件でもしょうがないというのは間違っています。そういう風土のままでは、次の担い手が生まれてきません。こうした状況を打開できるよう、映画産業が大きく拡大してきている中国市場の開拓など、製作関係者が今以上に潤う方法を日々考えています。ヒット作を出してちやほやされるだけでなく、経済的にも満足して暮らせるんだという姿を自分が見せていきたいと思います。(談)

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