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2019年5月1日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

2島で決着なら、国後、択捉失う

 不誠実きわまりない〝仕打ち〟にもかかわらず、なぜ譲歩を重ねようとするのか。柔軟に出れば、ロシアは領土を返すと本気で信じているのだろうか。それとも、解決できるとの何らかの確証をもっているのだろうか。

 安倍首相らは、4島返還というロシアにとって高いハードルを設定し続けて交渉の停滞をかこつより、「2島+アルファ」に変更したほうが先方にとって受け入れやすく、解決に近づくと考えている。

 しかし、自国の領土であることが歴史的経緯からみて明らかで、かつて一度もロシア領になったことのない国後、択捉両島を自ら放擲するとなれば、主権の放棄につながる。その結果、尖閣、竹島にどのような命運がもたらされるか、論じるまでもないだろう。

 日本政府が2島返還で決着したいとしても、ここはあくまで4島返還にこだわるべきではないか。その方針貫いて激しい交渉を重ねることで初めて、妥協策として2島返還が実現しうるのであって、最初から手の内をみせたのでは、交渉にはなるまい。ガルージン大使の発言のように、いい加減にあしらわれるのがおちだろう。

 ロシアの態度が不当、不誠実きわまりないことはいうまでもないが、誤解を恐れずにいえば、今回、早期決着が困難な情勢になりつつあることは、むしろ僥倖というべきではないか。2島返還で決着を見ていたなら、国後、択捉を取り戻す可能性は、未来永劫、失われていただろう。

 2島返還という譲歩をしてみても効果が上がらないとすれば、もはや選択肢は限られる。本来の原理、原則に立ち返るしかない。4島返還―という主張だ。交渉の長期化は避けられまいが、主権を放棄して独立国の尊厳を損なうことにくらべるとどちらがベターか。

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