運転技術は危ういレベル。それでも、免許更新
認知機能検査の中身も再検証したほうがいい、と疑問を投げかける。
「私の捉え方ですが、現在の検査は、記憶力を判断することに重きを置いているのです。たとえば、ある官公庁に長年勤務した方はほぼ満点でしたから、『記憶力・判断力に心配のない(認知機能の低下のおそれがない)』の分類でした。しかし、運転技術は危ういレベルだった。それでも、免許更新となったのです。このようなことを防ぐために、記憶力ももちろん大切ですが、運転の技量の測定をより厳密にするべきだと思います」
取材を終えるとき、読者の方たちにこんなことを考えてほしい、と語った。
「海外の一部の研究者がすでに唱えているのですが、医学的にみると、認知症の全員が運転できないというわけでありません。物忘れの症状が進みながらも、安全運転ができる人がいる一方、認知症のおそれはないのに、運転の技術はもはや、免許をもつレベルではない方もいると言われています。
私が高齢者講習を通じて観察をしても、そのとおりです。高齢者は、心身の老化や体調がそれぞれで大きく異なります。全員を十把ひとからげにして、 “高齢者から免許を取り上げろ!”という議論では問題の真相に迫りきれないでしょうね。今後の高齢社会を考えると、むしろ、大きな混乱が生じるように思います。だからといって、私は今回の加害者に同情は何らできません。報道によると、本人は前々から、安全運転ができないことをわかっていたようですね。それが事実ならば、身の程を知れ!と言いたい」
齊藤さんの、高齢ドライバーの事故を減らすための案
- 高齢者講習を事故や違反の有無にかかわらず、65歳から始める
- 認知機能検査を事故や違反の有無にかかわらず、70歳から始める
- 認知症の専門医を増やし、チェック機能を強化する
- 認知機能検査の精度を上げる
- 運転の技量を確かめることに重きを置く
- 80歳からは、事故や違反の有無にかかわらず、1年に1度のぺースで高齢者講習を受け、免許の更新をする
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