2024年7月17日(水)

Wedge REPORT

2019年5月7日

間違った安心感を本人に与え、事故につながる?

 「高齢者講習」で教習所内や路上での実車のとき、齊藤さんは助手席に座り、運転を観察する。

 「最近も10分間で、2度の逆走をした方がいました。しかも、逆走の自覚がない。徐行と一時停止、右カーブと右折の区別も正確にはできていない。あるいは、アクセルの踏み方が大胆で、60キロほどで走ろうとした方もいます。一時停止して、“右よし、左よし”と声を出して確認し、接近車が走ってきたのに、道に飛び出してしまうケースもありました。

 指導員は、“こんな運転はしてはいけない”と諭すことしかできません。免許を取りあげる権限はないのです。その後、このような高齢者のほとんどが免許更新となり、車を運転していることが考えられます。確かに怖いですよ、率直に言えば…」

 「高齢化講習」の1つである運転適性検査は「本来、心身両面の柔軟性のチェックのためにあるが、十分には機能していない」と指摘する。

 「高齢者の多くは、運転に限らず、とっさの判断が鈍い傾向があります。私の観察では、目(視力と視界)と足腰、運転神経から衰えてきます。運転適性検査をする目的の1つは、この老いをご自身が正しく認識することにあります。“これほどに心身が劣ってきたから、このように事故を回避しよう”と具体的に考えていただきたいのですが、そうはならないケースも多々あるのです。数十年前のように運転ができると錯覚し、車を操作している場合もありえます。

 これが間違った安心感をご本人に与え、事故につながる可能性があるのです。運転適性検査は、もっと効果があるものにしないといけない。現在は、講習というよりも、ただの儀式になり、チェックしているとは言い難い面があります」


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