トランプを読み解く

2019年5月8日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

馬雲がもしトランプだったら……

 米中貿易戦争の「20年説」と馬雲氏の引退宣言。ほぼ同じタイミングで世界に発信されたことは、単なる偶然なのだろうか。

iStock / Getty Images Plus / Rawf8

 今年9月、55歳という若さでアリババのトップの座から引いた場合、20年後の馬雲氏は75歳。これは何を意味するか。90歳を前に引退を表明する華人大富豪の李嘉誠氏がいれば、93歳の高齢で政権復帰するマハティール氏もいる。人生100年、終身現役の時代というだけに、馬氏はもしや、10年や20年スパンで第2、あるいは第3の人生を考えていたのかもしれない。

 ファーウェイのような「政治的」企業の経営者である場合、米中貿易戦争やら何やら政治的なトラブルに巻き込まれ、早い段階で身が滅ぶ羽目になれば一巻の終わりだ。人生はまだ長い。金に困るわけでもないし、しばらくの間は身を引いて静かにするのが一番。まさに「韜光養晦」の真義である。

 しかし、馬雲氏は貿易戦争の「20年説」を打ち出しながらも、20年後はどうなっているのかという将来のシナリオを描いていない。いや、むしろ自分の胸中を推し量る楽しみを世間に与えるという意味で、彼は実に愉快な大物であろう。

 馬雲氏がもし米国生まれ米国育ちの企業家だったとすれば、トランプ氏に酷似する存在になっていたかもしれない。彼はもしや、自分もトランプ氏同様、最終的に経済だけでなく、政治的にも世界を変貌させ得る力の持ち主であることを確信していたかもしれない。故に、彼は自分がもしトランプだったら、同じように、20年も続く貿易戦争を中国に仕掛けただろうと考え、「20年説」を語ったのかもしれない。

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