2024年4月20日(土)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年4月23日

中国の大手不動産会社がマレーシアで建設を進めている「フォレストシティ」の完成模型(写真:筆者提供)

「生き残れ!」と絶叫する中国の大手不動産企業

「活下去」――。

 中国の不動産大手万科(Vanke)の2018年秋季社内経営会議で打ち出されたスローガン。中国語で「生き残る」という意味だ。「活下去」の文字が大きく映し出された会場の写真がネット上で流れていた。

「同社の南方地区の9月経営月例会でもすでに、『活下去』のテーマが言及された。同社董事会主席の郁亮氏が不動産業の折り返し地点に差し掛かっているとの認識を示し、危機感を隠そうとしなかった。大手でさえこの状態だから、資本力が弱く、土地をあまり持たない中小不動産企業となれば、まさに戦々恐々だ」(2018年10月1日付「新華網」)

 中国にとって不動産ほど重要な産業はない。経済低迷に陥るたびに、政府は必ずインフラ投資を動員し、不動産市場にカンフル剤を打って危機を乗り切る、という手法を取ってきた。不動産は万能のけん引役で必ず作動する。一方、実需から乖離する不動産市場の相場は青天井で上がり続けてきた。世の中に崩壊しないバブルなど存在しない。

 供給過剰の状態が続くと、ゴーストタウンがいたるところに生まれる。それでも、なぜか不動産会社は潰れない。不動産デベロッパーの役割を担っている地方政府が傘下に融資担当の投資会社を抱えている限り、資金調達は成り立つのである。この仕組みはいつまで機能するのか、あるいはいよいよ危うくなってきたのか。異変は起きつつある。

「中国の不動産市場は、開発業者が金に糸目を付けずに土地を買いあさっていた昨年(編集部注:2017年)から状況が一変し、地方政府が行う土地使用権入札で不成立が増加している。(中略)入札の不成立は7月以降、大都市で目立って増えた。政府の引き締め策の長期化やマクロ経済の悪化で開発業者が流動性の減少や利ざやの縮小に見舞われているためだ」(2018年9月2日付「ロイター」)。

 タイミング悪く、米中貿易戦争に突入したため、もはやその影響は貿易にとどまらず、各方面に拡散し始めた。製造業の中国撤退、サプライチェーンの再編に伴い失業者が増加。失業すると、ローンの返済が滞る。そもそも中国経済を支えていたものは何かというと、「労働力」と「不動産」(=土地や資源の取引)なのだ。この2つに亀裂が入れば、まさに生死にかかわる大問題となる。


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