立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年4月23日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

「鳴り物入り」の海外巨大事業にも赤信号

 中国経済を支えてきた同国の不動産業者は、海外事業でも頓挫している。

 中国人の大量移住によって東南アジア屈指の「中国人街」を作り上げる。その中核プロジェクトとして、マレーシア南部のジョホールバルに中国の大手デベロッパー・碧桂園(Country Garden)が開発を手掛けている「フォレストシティ」(中国語名:森林城市)は、大きなトラブルに見舞われている。

建設中のフォレストシティ(写真:筆者提供)

 はじめに肝心の本土中国人向けの販売が中止となった。2017年3月11日付けのマレーシア華字経済紙「南洋商報」がトップで報じた。中止の原因はどうやら、中国の外貨準備の急減にあったようだ。同紙は、海外不動産投資による資産流出を食い止めるための中国政府による外貨管理規制の一環ではないかと分析した。

 2017年1月末の中国外貨準備高は2兆9980億ドルとなり、約6年ぶりに3兆ドルを割り込んだ。同年2月7日付けのロイター報道(電子版)は、エコノミストらの分析を引用し、「今回の外貨準備減少を受けて当局が規制強化を強める可能性がある」と伝えていた。

 中国人街の造成はいうまでもなく、東南アジアにおける中国の影響力拡大に寄与するもので、中国の国益に合致する。だが、それ以上に外貨準備の減少が深刻であり、海外への資産流出抑制をより緊急度の高い政策とせざるを得ない事情があったと推測する。

 さらに2017年3月27日付けの「ニューヨークタイムズ」(中文版)もフォレストシティについて、「中国が海外への資金流出規制を強化したため、多くの投資家が残金支払い不能に陥り、状況が悪化している」と報じた。

 デベロッパーの碧桂園が資金リスクに直面するだけでなく、マレーシア国内の政治問題にもなった。「外国人に国土を売り飛ばす」ことで批判を受けてきたナジブ政権(当時)には大きな圧力がかかった。マハティール元首相(当時)は中国企業による都市開発が大規模になり「広大な土地が外国に占拠されてしまった。実質的には外国の領土だ」と猛烈に批判した。

建設中のフォレストシティ(写真:筆者提供)

 そもそもフォレストシティとはどんなプロジェクトなのか。マレー半島の最南端、シンガポールに隣接しているジョホールバルでは、イスカンダル経済特区という大規模な都市開発が進められていた。その中でも最大のプロジェクトがこのフォレストシティだった。碧桂園は今後20年間で1700億リンギット(約4兆3900億円)を投じ、14平方キロメートルの土地(ほとんど人工島)に都市を作り上げる計画であった。

 政治色の強い不動産開発案件が、政治的理由によって妨害されることは驚くに値しない。そもそも経済も産業も、政治的な目線で俯瞰しなければならない。

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