トランプを読み解く

2019年5月8日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

20年後の世界とは?

 中国やロシア、トルコ、フィリピン……。世は「独裁者」の全盛期だ。

 中国共産党が国家主席の任期撤廃案を発表し、主席が無期限で務められるようになることを聞いたトランプ大統領は、「習氏はいまや終身大統領だ。偉大だ」と発言し、「そして、習氏にはそれが可能になった。素晴らしいことだ。われわれもいつか試してみなくてはならないだろう」と述べた。本音か冗談かは知らないが。

 そもそも中国は外部の民主主義制度やグローバリゼーションを利用して経済成長を遂げたのである。いざ外部世界、とりわけ米国だけでも通商の自由を部分的に制限すれば、中国は多大なダメージを受けることになる。

 3月19日付けのボイス・オブ・アメリカ(VOA)の記事(中文版オンラインhttps://www.voachinese.com/a/china-trade-investment-deficit-foreign-current-20190318/4836516.html?ltflags=mailer)は、「中国はこれまで紛れもなく世界の主要輸出国であった。しかし、中国の貿易黒字がいま縮小しつつある。中国は急速な開放に踏み切り、外資を誘致しなければならない」と、「外資誘致の切迫性」を指摘した。

 記事は、モルガン・スタンレーが直近発表した報告を引用し、「今年(2019年)中国の経常収支が悪化し、25年ぶりに年間ベースの経常赤字に転じる」との予想を報じた。さらに中国人消費者の海外消費の拡大、高齢化の進行、労働力の減少、労働力コストの増加、貯蓄率の低下など、負の要因がそろっている。

 経常収支の赤字転落は資本流出に対する緩衝を奪うだけでなく、信頼感を損ね、資本流出をさらに加速させる可能性がある。要するに、「外資誘致の切迫性」と裏腹に逆の動きがどんどん強まるわけだ。

 このような状況が20年も続くと、中国はどうなるのか。このシナリオを描いているのはトランプ氏である。20年どころか、2年だけでもこれが続いた場合、大変なことになる。外資の流出が莫大な規模に上り、サプライチェーンの移転が着々と進むだろう。一旦流出した資本や移転されたサプライチェーンは二度と中国に戻ることはあるまい。たとえトランプ氏の後任が政策を転換しようとしても、すでにできない状態になっているはずだ。

 そうした意味で、新たな世界秩序が出来上がった時点で、トランプ氏は青史に名を垂れる偉大な政治家として墓に入れるだろうし、70代の馬雲氏は今日のトランプの如く風雲児として世界の表舞台に舞い戻ってくるだろう。

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