トランプを読み解く

2019年5月8日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

馬雲が描いた米中貿易戦争の将来像

 馬雲会長は昨年9月10日、1年後(2019年9月10日)にアリババ集団の会長職を退任すると発表した。発表当日は、馬氏の54歳の誕生日で、中国の「教師節(教師の日)」にもあたる。「自分が心から愛する教育の世界に戻りたい。私にこの上ない興奮と幸福をもたらすだろう」。一代で世界的企業を作り上げたカリスマ創業者が50代前半にしての早期引退は国内外に衝撃を与えた。

 辞任発表のわずか1週間後、馬雲氏は杭州市で講演し、米中貿易戦争は米中覇権争いであり、トランプ大統領の任期が終わっても戦争は終わらず、20年間にわたって続く可能性があると指摘した(2018年9月18日付けブルームバーグ報道)。

 その直後の9月22日、私のブログに読者から次のコメントが寄せられた――。

「米中の争いは単なる経済戦争ではなく、覇権戦争でもあるから、トランプ政権後も続き、20年以上にわたる長い戦いとなるだろうという人(馬雲氏)もいる。本当だろうか。トランプ政権の次の政権が、トランプと同じ方向を突き進むとなぜそう断言できるのだろうか」

 多くの人の疑問を代弁するコメントでもあった。トランプ大統領が仮に再選を果たして続投するとしても残り6年しかない。次の1代や2代の大統領がトランプ氏の既定路線を踏襲する保証はない。なぜトランプ氏が仕掛けた対中貿易戦争が20年以上も続くと、馬雲氏は言いきれるのだろうか。

 中国のような国で世界級の企業を築き上げ、経営するには、経営面における卓越した才能だけでなく、優れた政治的嗅覚も兼ね備えなければならない。馬雲氏がそうした人物であるならば、その米中貿易戦争の「20年説」は極めて意味深長なもので、吟味に値するだろう。

 米中貿易戦争が20年以上も続くという仮説が成立するには、たった1つの条件を満たせばよい。それは戦争を仕掛けたトランプ氏以降の歴代大統領も、その既定路線を踏襲せざるを得ない状況に置かれることだ。

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