立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年5月10日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

トランプ大統領の「利益相反」問題

 政治家にも同じような「利益相反」の問題が発生する。実業家出身で米国大統領になったトランプ氏自身も大変苦労した経緯がある。氏は経営してきた企業トランプ・オーガナイゼーションについて、大統領に当選した暁には、会社の実権を息子たちならびに運営委員会に譲り渡すと公約した。

 私的企業のビジネスと大統領の公務遂行に生じ得る利益相反の問題をクリアするために、トランプ氏は弁護士等の法律専門家を通してあらゆる手段を動員した。しかしながら、企業経営から離れ、日々の業務に携わらないといっても、会社は依然としてトランプ氏の影響下にあることに変わりはない。

 家族の事業経営も同様に利益相反の問題がつきまとう。トランプ大統領の長女イヴァンカ氏の経営する会社が中国政府に申請していたファッション・ブランド「イヴァンカ・トランプ」などの商標登録が2018年5月に承認された。タイミングが良すぎるくらいに、トランプ氏が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)に対する制裁緩和に踏み切ると発表したのとほぼ同時であった。

 ワシントンで米政府を監視する市民団体CREWがすぐさまトランプ一族と中国とのつながりを問題にした。CREWは公式サイト上で、「イヴァンカは、自分の会社と利益相反の可能性があるにもかかわらず、大統領補佐官として合衆国を代表し、さまざまな外交行事に出席している。彼女は、利益相反を防ぐためと言って会社の社長ポストからは身を引いたが、利益の配分は受け取り続けている」と指摘した。

 2018年7月、ついにイヴァンカ・トランプ大統領補佐官がファッションブランド「イヴァンカ・トランプ」を閉鎖すると発表した。販売不振という情報もあるが、ホワイトハウスの仕事とブランドの利益相反問題も一因だったのではないか。

 政治家、しかも一国のトップとして、国家利益と自身の私益との利益相反問題を解決するのは、そう簡単ではない。本人による一言や二言の決意表明で片付けられる問題ではない。第三者による監視体制が欠かせない。

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