妙なプロ意識をもっても、広報としての技能がない
で、オフィスに戻るんですよ。みんなでタクシーに乗って。(広報は)道案内だけは、きちんとしていました…(笑)。運転手さんに、命令口調だけどね。かわいそうだった。タクシー代を払わずにさっさと降りていく。事前の打ち合わせでは、広報が払うことになっていたんだけど。(ビルの)1階のエントランスでも、「撮影しよう」と言い始める。カメラマンも、財務の女性も「???」って感じ。すべてが思いつきで、いきあたりばったり。数年のキャリアしかないのに。突然、カメラマンに、「ここはやめましょう」って。
今度は、12階かな、オフィスへ行くんだけど、エレベーター前で言うの。「業者は、向こうのエレベーターだから」って指をさす。僕やカメラマンたちは、業者ですよ、業者…(苦笑)。ふつう、一緒のエレベーターに乗るけどね。仕方がないから、業者専用エレベーターに乗り、12階へ行くと、いない。「こっち」という声がする。振り返ったら、(広報が)いる。財務の女性は、「(こんな広報は)恥ずかしい!」と言いたげ。
会議室みたいなところで、(財務の女性への)インタビューを僕らがする。その間は、広報は話をじっと聞かなきゃいけない。ところどころ、財務の女性をフォローしないと。ところが、(財務の女性よりも)たくさん話しているから、勘弁してよ、という感じ。頭がよさそうな財務の女性が不愉快そうな顔だった。
数日以内に、僕がインタビューの話を原稿に2000字くらいでまとめて送った。そしたら、(広報は)赤入れを大量にして送ってきた。7割くらい。ほとんどが、会社のホームページや会社案内からの抜粋だと思う。前後の流れからして意味不明。しかも、誇大広告みたい。僕らがお金を受け取る、といっても、このサイトには社内規定がある。ここまで「創作」だと、まずい。だから、広報にメールで断ったわけ。
「理解を超えた修正で、取材当日の話とまるで違う。内容に(僕らは)責任が負えない」って。「報酬もいらない」とも書いたの。数時間後、電話をかけてきて、「元の原稿のままでいい」と言い始める。もうわけがわかんないよ。僕もカメラマンも、いまだにトラウマ。
財務の女性からは、掲載後に「ご迷惑をおかけしました」とメールが来た。なんでこんなに違うんだろう。伝え聞くと、いつの間にか、辞めたみたい。(社内でも)反感を買われていたみたいだからね。妙なプロ意識をもっても、広報としての技能がない。
こういうベンチャーには、広報を育て上げる仕組みがないんだろうね。上司は30代後半の男だったけど、広報の経験はないのに管理部門のヘッドをしていた。これでは、教えるなんてできないでしょう。