アフリカを幸せにできない欧米と中国
「途上国が世界を牽引する時代」に日本人に望まれる資質は「多様性」への理解である。欧米が世界を治めた時代は文化に優劣をつけ、劣っている文化を捨てさせ従わせようとしたり、憧れさせ同化しようとする政策が採られたがこうしたやり方は、もはや通じない。今後は、「違っていること」を前提にして、相手を理解・尊重し、その上で自分の考えを説明できることが重要になる。
それが最も得意な民族は日本人だと思う。例えば、西欧人はどこもかしこも水洗トイレに変えていく。だが、私が見てきた海外青年協力隊などの日本の若者は、現地方式のトイレのやり方をよく観察した上で清潔にし、自分も使うことから始めるのだ。こうした光景を見ていると、歴史的にもあらゆる宗教や文化を多様に取り込み同化してきた、世界でも類まれな能力を持つ日本人の姿が浮かび上がる。
来るべき「アフリカの時代」は、日本人にとって大きなチャンスなのだ。ザンビアだけでも、74の部族がある。部族によって言語も違えば文化・習慣も違う。今まで、アフリカに深く関わってきたのは、かつての西欧諸国であり、最近では中国である。「時すでに遅し」と考える読者が多いかもしれないが、そうともいえないのだ。それは、ザンビアの歴史を振り返ればよく理解できる。
ザンビアは64年に独立するまで、英国植民地であり、北ローデシアと呼ばれていた。イギリスは当時、銅の採掘権をアングロアメリカンコーポレーション(以下、ACC)という会社に与えていた。同社は、採掘で得た利益を現地労働者にも地域社会にもほとんど分配しなかった。
そこで、ザンビアのケネス・カウンダ初代大統領は、「利益のほとんど全部が株主に行くのはアンフェアだ」と言って、鉱山の国有化に踏み切ったのである。
ACCは「私有財産を取り上げるのは社会主義だ、共産主義だ」と、メディアを使って猛反対した。これらが奏功して、イギリス政府は、欧米諸国と連携し経済制裁を実施し続け、ザンビアは70年代には貧困国に落ちてしまった。欧米からの度重なる民営化の圧力に抗しきれず、追い込まれたカウンダ大統領は88年、再民営化に同意せざるを得なくなった。
国有会社時代にカウンダ大統領は、鉱山の収益で病院や学校などの社会資本を整備した。2000年には再民営化が完了したが、民間会社が社会資本を整備するわけがない。雇用も減少した。現在は、もともと鉱山の権益を持っていたアメリカ、イギリス、イスラエルにカナダ、インド、オーストラリア、スイス、中国の8カ国の鉱山会社がザンビアの銅を牛耳っている。植民地主義・帝国主義的支配の後は、株主資本主義を振りかざす欧米流の限界がよく現れているといえよう。
一方、中国はどうか。例えば、世界第4位の総合通信機器メーカーの中興通訊(ZTE)が近年、アフリカでのプレゼンスを高めている。また、11年6月にはSADC経済貿易フォーラムを北京で開催するなど、アフリカとの関係強化に積極的だ。
メディアを使ったPRも上手い。中国中央電視台(CCTV)という国際放送は英国放送協会(BBC)やCNNと同じくらい、どの国のホテルでも放送している。しかも、BBCやCNNがスポーツ中継する間もCCTVはニュースを流し続けるため、ニュースを見たい視聴者を囲い込んでいる。出演するキャスターは西洋人で、中国に都合の悪い情報は流さない。しかも、日本で殺人事件や事故などがあると、やたらと強調するから、「日本は悪い国」との印象をあえて視聴者に与えているとしか思えない。