2024年12月12日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2019年6月26日

 また、今後、これを機に商務部の影響力が強まるのどうかも興味あるところ。それはすなわち、昨年1月のウェッジ(『中国のネット経済は経済発展の原動力にはなりえない』)で紹介した、中国の経済学者の指摘でも中国は輸出主導型経済に再注力するべきでという意見と関係する。

 これまで中国の戦略的産業育成は、国家体制改革委員会主導で行われてきたわけであるが、その結果、米国との摩擦が生じその戦略の見直しが迫られている。

 中国の産業構造からいえば、5Gのようなアメリカがセンシティブになる分野以外でも、通常の機械設備や素材、部品産業などで力を持ち始めている分野も多くあり、軽工業分野も含めて、商務部は、こうした分野の輸出振興を行ってきた経緯にあるからだ。

米国と何らかの妥協をするのが自然な流れ

 こうした分野は、日本企業の得意分野でもあり、多くの企業が中国に進出済みで、日本からの中国への輸出の主力でもある。中国としては、国家の威信を傷つけるような妥協はできないにせよ、現実的に見れば最大の輸出市場である米国と何らかの妥協をするのが自然な流れであり、そうした意味で、今回の動きが一つのきっかけになればと、ビジネスマンとしては期待したい。

 ちょうど最近、日本経済新聞で紹介されたIMFの予測(『中国、陰る外貨パワー 10年で130兆円流出』)に基づくと中国は2022年経常収支が赤字になるそうであるが、対外資産の多くを個人と企業の対外投資で経常収支黒字に貢献している日本と違って、対外資産のほとんどを外貨準備に頼り、貿易収支が赤字になっても穴埋めにはならない中国にとっては、ここにきて貿易黒字の維持の重要性が再認識されているに違いない。

 ところでこうした意味で、日本政府の貿易交渉の担当者のネゴシエーション能力は、いかなるものであるのか、どなたか分析してくれたらありがたい。

  
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