現在、あらゆるテクノロジーを使った機器は、多数の国から生まれた知見の集約で生まれている。その最たるものはスマートフォンだ。ハードウェアもソフトウェアも、そして前提となるネットワークまで、ひとつとして一国のエンジニアだけでは成り立たない。アメリカと中国はそれらにおいて中核をなす存在であり、きわめて強く相互依存している。
ファーウェイが米商務省産業安全保障局のエンティティリストに掲載され、実質的にファーウェイへの輸出が「禁止」されたことを受け、米中の依存関係がすぐに露出した。
ソフトウェアでは、米Googleがファーウェイ製スマホに使われるOS・Android(アンドロイド)のアップデートサービスを今後停止するという。ハードウェアにおいても、ファーウェイへパソコンやデータサーバーのためのCPUを供給するインテルやOSを供給するマイクロソフトなどもサービス停止と報道されている。
また、ファーウェイは自社製スマホ用半導体「Kirin」シリーズに英アーム社のプロセッサー技術を使っているが、アーム社はファーウェイへのライセンス供与を停止するという。ファーウェイはOSとプロセッサーという、中核の「部品」に大きな影響を受けたことになる。
現在は、どこのスマホも同じような部品を使っている。ファーウェイは「Kirin」を自作しているが、シャオミやOPPOはクアルコムから「Snapdragon」という同じシリーズのスマホ用半導体を調達している。カメラは、ハイエンド機ならばほぼソニーが市場を独占しており、ディスプレイパネルは韓国のサムスン電子やLG電子などから調達している。
ディスプレイパネルやカメラについてはアメリカの影響をあまり受けていないし、スマホ用半導体についても、台湾のTSMCやサムスン電子などに製造を委託していた場合、短期的には問題ないだろう。
だが、これら消費者にも比較的馴染(なじ)みのあるもの以外にも、多数の部品がアメリカからファーウェイへの「禁輸」の影響を受けている。