スマホやパソコンで使われる
「定番」のアメリカ製部品
スマホやパソコンはCPUのような中核プロセッサーとディスプレイパネルだけでできているわけではない。無線回路や電源回路など、多数のパーツの集合体だ。そうした部分はどのスマホにも共通項が多く、同じようなメーカーが大量に供給している。ある種「定番」とも言える部品があるのだ。
例えば、アメリカ企業では、半導体製造企業のブロードコムやザイリンクスの作るワイヤレス通信用LSI(大規模集積回路)、アナログ・デバイセズ、インファイなどが作る信号処理用LSIなどがそれにあたる。その他にも、カメラに使われる光学部品メーカーのルメンタム・ホールディングスも、顔認証に関わる部品について、今回の措置を受けてファーウェイとの取引を停止している。
電子部品についてはある程度影響が見えているが、内部の基板同士をつなぐフィルムやコネクター、防水用のパッキンなど、スマホに必要な部品は多岐にわたる。それらは日本や中国本土からの供給も多いが、アメリカ企業ももちろん供給元の一部だ。
米IDCの調査によれば、18年度のファーウェイのスマホの出荷台数は2億台を超えており、同社のコンシューマー向け端末事業の売り上げは全体の約48%、約5兆6347億円を占める。それだけ同社はスマホに賭けているのだ。
同じIDCの調査によれば、19年第一四半期における、世界スマホ市場のシェアランキングで、ファーウェイは世界2位の19%、4位にはシャオミ(8%)、5位にvivo(7・5%)、OPPO(7・4%)と中国企業が続く。この中国系4社だけで世界のスマホの41・9%を生産していることになる。
そして、これらの企業は、中国国内にも旺盛な需要を抱えている。市場調査会社カナリスによれば、19年第一四半期、ファーウェイは中国市場に3000万台のスマホを出荷したという。
こうしたデータは同社を含む中国企業が大量の部品需要を支えていることを意味する。前述の「定番部品」を供給するアメリカ企業は、どこも売り上げのおおよそ十数%を中国企業に依存している。ファーウェイ単体でのアメリカからの調達額ははっきりしないが、同社は18年度に6800億円分の資材を日本から調達しており、これより大きなものであると想像できる。すなわち、スマホ関連の製造業は、中国企業の需要に支えられて業績を維持しているのだ。
こうした相互依存の中で、このまま米中の技術の分断が続いていくと、ソフト・ハードの両面でどのような影響が出るのだろうか。