いち早く影響が出たのが、冒頭に記載したAndroidだ。AndroidはGoogleが主体になって開発したOSである。そのコアは誰もが使えるオープンソースなことであり、「Androidオープンソースプロジェクト」(ASOP)と呼ばれる。
それに加えて、Googleマップに代表されるサービスや決済、アプリストア、OSのアップデートの仕組みなどをセットにする形で成り立っている。そうした、Googleに依存する部分を「Google Mobile Service(GMS)」といい、ASOPとGMSをセットにしたものに、さらに各メーカーが自社端末に合わせてカスタマイズをしたものが、われわれが普段「Android」と呼んでいるものだ。
ASOPはオープンソースなので自由に使えるし、自社カスタマイズの部分は他社に影響されない。Googleのサービスが使えない中国で販売されている中国企業製スマホのほとんどは、ASOPに中国企業が作った独自ソフトとサービスを組み合わせたものだ。だが、他の国ではGoogleのサービスが支持されているので、GMSをセットにして利便性を高めている。GMSはアメリカ製であり、今回の「禁輸」の影響を受ける。
しかしAndroidについて、ファーウェイなど中国企業が一方的にアメリカから供給を受ける立場なのか、というとそうではない。
ASOPはオープンソースであるがゆえに、多様な開発者・メーカーからの改善が集約されて進化していく。「ASOPの改善についてかなりの貢献をしている」とファーウェイは主張しているが、それは事実であるようだ。ファーウェイのみならず、多数の中国企業がAndroidベースの機器を開発しており、Androidの改善を効率的に続けるには、多数の開発者を抱える中国企業からのフィードバックは欠かせない。
また、ハードウェアについてはどうだろうか。今回のような事態に備え、ファーウェイは18年中から、アメリカ系メーカーの部品受注を増やしていた。そのため、今回の禁輸措置が短期で終わるのであれば、なんとかしのぐことができる。
だが、もし長期にわたるなら話は別だ。中長期でみれば、中国企業は自身で部品を開発・製造する必要が出てくる。アメリカ企業が供給する部品の多くは、中国企業にとって貴重だが、「そのメーカーしか作れないもの」ではない。ただ、「自前で作るより、供給を受けた方が安いし品質も安定している」だけである。