2024年7月16日(火)

国際

2019年7月22日

他人が言うことを聞きすぎるな
プロとしての矜持を持て

 07年の「サステイナブルZoom−Zoom宣言」では、トヨタが大成功を収めていたハイブリッド車(HV)ではなく、内燃機関をブラッシュアップしていくことを発表した(15年までに全車の平均燃費を30%改善)。これに対して「マツダは、HVに投資する余力がないだけなのでは?」と陰口をたたかれた。しかし、リッター30キロというHVに伍(ご)する燃費性能を持つ「スカイアクティブエンジン」の開発を実現。この技術を搭載したSUV「CX−5」をはじめとする商品群を発表し(12~18年)、ヒットを続けた。

 競合がやったから、うちもやるという横並び意識を持つ人は少なくない。メディアやアナリストもそのように囃(はや)し立てるから、余計にそうなってしまう。「一般論」という言葉に惑わされず、その道のプロ(専門家)としての矜持(きょうじ)を持たなければならない。

 新しい技術は思い浮かぶが、経営陣を説得して実行するにはものすごくエネルギーが必要になる。ところが、競合他社がやった時にはすぐにやろうとなる。「他社がやっているからやる」「やっていないからやらない」とやっていると、大火傷(やけど)はしないけれども、低温火傷することになる。それこそ「ゆでガエル」だ。事なかれ主義で冒険しないからそうなる。こういう風土が日本の企業をダメにしたとも言える。

 そもそも、「ロマン」より先に「そろばん」を出してくるとおかしくなってくる。まずは、ロマンを語る。「もっとできるだろう」と、けしかける。そうやって「More More(もっと、もっと)」を繰り返すことで「やってやろう」という気になってくる。いい意味で「欲張り」になることで議論の次元を上げることができる。

 そのような議論を通じて何万人も従業員がいる会社として、クルマを通してどのような社会貢献ができるのか、考えなければならない。

現在発売中のWedge8月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ムダを取り戻す経営 データ偏重が摘んだ「創造の芽」
Part 1  失われた20年の失敗の本質
         今こそ共感や直観による経営を取り戻せ――野中郁次郎(一橋大学名誉教授)
COLUMN  組織内の多様な「物語」が新しい価値を生み出す――やまだようこ(京都大学名誉教授)
Part 2      低成長を脱する処方箋
         潤沢な「貯金」を使い未来への「種まき」を――中島厚志(経済産業研究所理事長)
Part 3      逆境を乗り越えた経営者の格言
          ・「ビジネスモデルの変革なくして企業に未来はない」――坂根正弘(コマツ顧問)
          ・『そろばん』より『ロマン』 大事なのは『志』を持つこと」――金井誠太(マツダ相談役)
          ・「階層を壊して語り合う 自由闊達な風土が付加価値を生む」――小池利和(ブラザー工業会長)
Part 4      株主資本主義がもたらす弊害
             「株主偏重のガバナンスは企業の成長を阻害する」――松本正義(関西経済連合会会長)
Part 5  米国型経営の正しい使い方
          ・「経営者と現場は『こだわり』を持て」――星野佳路(星野リゾート代表)
          ・「消費者価値を創る本当のマーケティング」――森岡 毅(刀・代表取締役CEO)

  
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◆Wedge2019年8月号より

 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 

 
 
 
 


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