2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年8月1日

 2019年7月20日は、アポロ11号が、史上初の月面着陸をし、米国のニール・アームストロング船長が、人類初の月面歩行をして、丁度50周年を迎えた。トランプ大統領、ペンス副大統領を始め、米国中でお祭り騒ぎの感があった。1969年の感動的映像が、様々な所で流れた。

(RomoloTavani/feedough/Vector/iStock)

 この人類の画期的業績は、実は東西冷戦の産物だった。1957年10月4日に、当時のソ連(現ロシア)が、初の人工衛星の打ち上げに成功し、米国は、「スプ―トニック・ショック」を受けた。これを機会に、宇宙開発に拍車をかけた米国の努力の賜物が、50年前のアポロ11号の成功だった。

 今日、米国は、再び、月への出発に挑戦する。米国の国立宇宙評議会(NSC)の議長も務めるペンス副大統領は、5年以内、すなわち2024年までに、米国人の宇宙飛行士を2人、月に送る計画を発表した。そのうち1人は女性として、女性初の月面着陸を試みると言う。トランプ大統領が口癖にしている、「米国を再び偉大な国に(Make America Great Again)」の一つの表れであろう。米国は、将来的には、月に恒久的基地を建設することを考えていると言う。また、火星にも人を送る計画である。

 50年前の月面着陸の背景に東西冷戦があったように、今回は、中国との新冷戦も無関係ではない。2019年1月3日、中国は、世界初、月の裏側に、無人探査機を軟着陸させるのに成功した。国際宇宙ステーション(ISS)始め、ロシアも含めた宇宙での国際協力が進む中、中国の単独での宇宙開発や、数年前に中国が衛星破壊実験を行なったこと等は、米国にとっても脅威と映った。米国は、宇宙開発での優位を保つためにも、月面着陸計画を前倒しした。

 宇宙開発は、調査研究はもとより、経済的にも、安全保障上も重要である。7月13日、フランスのマクロン大統領は、革命記念日を前にして、軍の幹部が集まった会合で、宇宙担当の最高司令部(「宇宙軍」)を9月までに創設することを発表した。マクロン大統領は、フランスの宇宙での能力の向上を図り、衛星の防衛を含む宇宙防錆戦略の必要性を訴えた。この背景には、スパイ衛星を含む通信情報衛星の発展、ジャミングやサイバー攻撃の増加があり、中国やロシアに対抗するということもあるようだ。

 米国でも同様の動きがある。2019年3月1日、米国防総省は、議会に対して、「宇宙軍」(Space Force)の創設に関する法案を提出した。これには、予算の裏付けが必要なので、2020年度の「国防権限法」(NDAA)で正式に決定されることになる。

 では、日本は、どのように対応しているのだろうか。日本も、長年、JAXAを中心に、宇宙の国際協力に積極的に携わってきた。優秀な宇宙飛行士も11人輩出した。1人で何回も宇宙に行った飛行士もいる。今後も、宇宙開発における日本の貢献は継続されるだろう。7月24日、ワシントンDCでは、「宇宙に関する包括的日米対話」の第6回目の会合が開かれる。「包括的」という名の通り、宇宙にかかわる全ての省庁、-外務省、内閣府、経産省、防衛省、文科省等―が参加して、米国の複数省庁と、今後の宇宙に関する日米協力について協議する。議題には、宇宙状況監視(SSA)、スペースデブリ低減、月探査協力が含まれる。月探査に関しては、既にNASAがJAXAに協力を申し入れて、JAXAは既に承認している。

 日本とフランスとの宇宙協力に関しては、マクロン大統領が訪日し日仏首脳会談が行なわれた6月26日、両国間の宇宙協力に関する文書が取り決められた。JAXAとCNES(フランス国立宇宙研究センター)との協力として、火星探査計画や「はやぶさ2」が回収する試料分析における協力が取り決められた。

 アポロ11号の月面着陸から半世紀、宇宙での国際協力は、ますます広がって行きそうである。

  
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