2024年11月22日(金)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年7月31日

――それでは釜石会場から離れまして、大友さんおススメの注目のチームをあげていただけますか。

大友 前回もベスト4に残りましたがアルゼンチンですね、ラグビーファンの中では世界の強豪国であることは十分に知られていますが、多くの方はアルゼンチンといえばサッカーでしょというイメージだと思うんです。

 アルゼンチンがラグビー? という人がほとんどですよね。でも、強いんです。

 現在、世界のラグビーは概ねどこも同じような方向(戦略、戦術)に進んでいるのですが、アルゼンチンはちょっと違うんです。コーチの言うとおりに動いていないと言いますか。

 エモーショナルなチームで、一人ひとりが勝負にいく気持ちがよく出ているチームです。

 試合後の感情の爆発も他のチームとは違って、勝っては喜び、負けては泣いて、あらゆるところに感情を爆発させています。ファミリー的な結束力を一番感じさせてくれるチームでもあります。

 ぜひともアルゼンチンに注目してみてください。

――感情の爆発ですか、いいですね、これでまたひとつ楽しみなチームが増えました。ワールドカップには様々なチームが出場しているのですが、ひとことで言ってラグビーの魅力とはなんでしょう?

大友 ラグビーをよく知らない方からみれば「なぜ日本代表には外国人選手がたくさんいるの?」という感じを受けると思うんです。ひとくちに外国人選手といっても、いろいろな形で日本代表の権利を獲得しています。

 中学、高校、大学の頃から留学している選手や、日本に3年以上居住してトップリーグ等で活躍している選手、またラグビーに限ったことではありませんが、日本で育ったハーフの選手も増えてきました。

 これからの社会は日本のカルチャーの中で外国人と一緒に何かを行うことが当たり前になっていきます。ラグビーの日本代表はそれを先取りして取り組んでいたのです。

 ラグビーの国際機関であります「ワールドラグビー」も多様性を尊ぶ競技であることを謳っています。その考えは車いすラグビー、デフラグビー、ブラインドラグビーなどにも共通していて、スポーツとしての価値以外にも価値のあるものだと思っています。

 国籍の違う人や価値観の違う人たち、違うカルチャーを持っている人たちが、協力し合ってひとつのチームを作っていくこと、それ自体が素晴らしいメッセージを持っていると思っています。

――ダイバーシティ&インクルージョンという考えをラグビーではかなり以前から具現化していたということですね。では最後に日本代表に期待することをお聞きしたいと思います。

大友 もちろん勝ち進んでほしいのは当然ですが、すべてのチームが最高の準備をしてこの大会に臨んでいますから、最後は運を引き寄せるほど努力をしたチームが勝つと思っています。

 今回は自国開催ということで精神的プレッシャーがより大きいとは思いますが、それ以上に素晴らしいものがあると過去出場した選手たちが語っています。

 目の前に強い相手がいる。それ自体が楽しいことなんです。まずは結果のことより、準備してきたことを出し切って、やれることをやり切ってほしいと思っています。

 大会後は結果を踏まえて強化のプロセスですとか監督選びですとか、検証すべき点はすべて検証する必要はあります。ここはしっかり行うべきことだと思っています。

――本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました。

 最後になりますが、前回のワールドカップ(2015)で24年間勝ち星の無かった日本代表が、世界ランク3位(当時)の南アフリカを34—32で破る勝利を挙げた試合の取材ノートを見せていただきました。

 時間の経過とエリアと試合状況がリンクするように書かれています。その緻密な内容に驚かされます。

 ですが、最後の最後、日本代表が大逆転を演じたシーンだけは、大友さんの精神状態も最高潮に達しておられたのでしょうか、それが伝わってきました!

 貴重な資料までお見せいただきありがとうございました。

<大友信彦プロフィール>
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』で活動。87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。ラグビー専門ウェブマガジRugbyJapan365スーパーバイザー。著書に『再起へのタックル』(洋泉社)『ザ・ワールドラグビー』(新潮社)『奇跡のラグビーマン 村田亙』(双葉社)『釜石ラグビーの挑戦』(水曜社)『釜石の夢 被災地でワールドカップを 』(講談社文庫)『オールブラックスが強い理由 世界最強チーム勝利のメソッド』 (講談社文庫)など多数。

<新刊紹介>
『オールブラックスが強い理由 世界最強チーム勝利のメソッド』 (講談社文庫)
『読むラグビー』(実業之日本社)

  
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