2022年8月15日(月)

Wedge REPORT

2019年8月15日

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「たまごっち」が変革のヒント
現場のアイデアを「直感」で拾え

 コムトラックスは、私が経営企画室長をしていたとき、部下の技術者に「何か面白いプロジェクトはないか」と声をかけたところ、当時爆発的にヒットしていた「たまごっち」をヒントにした提案を上げてきたことがきっかで生まれた。彼はある販売店の社長との何気ない会話の中で出た、「たまごっちのゲームキャラクターが『お腹(なか)がすいた』など自身の状態を知らせるように、建機自らが位置や燃料残量などの情報を発信してくれれば便利だ」という話から着想を得ていた。

 かつて日本と米国でサービス部長を務めた経験を持つ私は、それを価値あるシステムだと確信し、すぐに開発提案したが、肝心の開発部門からは、そういったシステムの必要性が理解しにくかったせいか歓迎されなかった。そこで、私がCFO(最高財務責任者)に直談判し、私的プロジェクトとして何とか開始できることとなった。苦難のスタートだったが、その後、福島の建機レンタル会社の若社長から、所有する建機1000台にコムトラックスを取り付けてほしいと発注があり、一気にプロジェクトが進んだ。

 最初の頃はコムトラックスを有料オプションで販売しており、なかなか普及しなかったが、自分が2001年に社長になったタイミングで、コストを自社負担し、コムトラックスを標準装備することを決めた。短期的には重荷となるが、コムトラックスで様々なデータを集め、サービスを向上させていくための投資という発想で進めた。

 ビジネスモデルの変革は、こうした顧客のニーズを理解する現場が考える、一見見逃しそうなアイデアをトップが直感的に拾い上げ、その価値の実現に向けて社員と議論した上で、トップ自らが、何が何でも実現するという強い意志をもって進めなければ絶対にできない。トップが常に素晴らしいアイデアを生み出し続けることは現実的ではない。ボトムアップ、ミドルアップによる好循環が生まれやすい風土、環境づくりに普段から注力しておく必要がある。

 株主からの評価ももちろん大事だが、最も大切なステークホルダーは顧客だ。コマツの製品を買ってくれる顧客がいなければ株主はじめ他のステークホルダーに分配する原資も得られない。顧客は、コマツの製品やサービスに対する評価者であると同時に、良質な製品やサービスには相応の対価を支払い、利益を与えてくれる存在でもある。長期的な視点に立ち、顧客価値を高める施策を考えねばならない。

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