中東を読み解く

2019年9月5日

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カーターを落選させた前例

 イランがこうした米大統領選を利用したのには前例がある。革命直後に起きたテヘランの米大使館占拠事件では、大使館員52人が人質になり、1981年1月に444日ぶりに解放された。解放交渉は数カ月前から始まったが、イラン側はあえて前年11月の大統領選挙の前に解放することはしなかった。このこともあって時のカーター大統領は再選を阻まれ、レーガン氏が新大統領に当選した。今回は逆に、トランプ氏に花を持たせる形にしようというわけだ。

 ロウハニ大統領はこの新戦略に前のめりになっている感がある。それだけイランが直面する経済的な苦境を実感しているということだろう。イランの国家経済の原動力である石油の輸出は制裁前には日量250万バレル程度あったが、現在は50万バレルを切っているというのが実態だ。

 ロウハニ大統領は先週、いったんはトランプ大統領との会談に「イランの利益に合致するなら」と前向きな発言をしたものの、24時間もたたないうちに撤回。米国が制裁を解除しない限り会談しないとの立場に戻った。これは最高指導者ハメネイ師から諫められたため、との憶測を呼んでいる。

 トランプ大統領は6月、イランとの直接交渉に「前提条件は付けない。交渉しなければ、イラン経済は破滅的になる」と述べているが、ポンペオ国務長官がイランの核開発の全面放棄など12項目の厳しい条件を突き付けており、大統領の発言の真意はあいまいなままだ。

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