From NY

2019年9月12日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

治安改善し、豊富な文化が人を呼ぶ

 ヘルド氏はこう続けた。

「さらに90年代になってルドルフ・ジュリアニ市長がニューヨークの警察官の数を増やし、タイムズスクエアから風俗関係の店などを追い出すなどして、治安を劇的に改善させました。現在ニューヨークに常駐している警察官の人数は、小国の軍隊よりも多いのですよ。人々もこの街は安全だと感じるようになったんです」

 治安が良くなったことにより、一時は郊外の住宅に移った若い家族たちが子供を連れてマンハッタンに戻ってきた。

「教育機関の改善によって私立のみならず、公立の学校の教育システムもかなりレベルが高く充実してきた。余裕のあるインテリ階級は、文化的なバラエティに富んだこの街で子育てをしたいと願う人も多いのです」

 またニューヨーク市はコロンビア大学、ニューヨーク大学など、大きな総合大学をいくつも抱えている。世界中の裕福な家庭の親が、こうした大学や大学院などに子供たちを送ってくる。

「寮ではまかないきれないので、経済的余裕がある学生はアパートやコンドミニアムを探すことになります。また富豪階層は、たとえ年中住んでいなくてもニューヨークにアパートメントやコンドミニアムなどを所持する。こうして次々と外からニューヨークに移住してくる人口に対して、新しい物件の建設がまったく追いついていないのが現状なのです」

中古物件の価格は?

 また一つ、日本と大きく違うのはニューヨークは中古物件でも価値が落ちないことである。地震など大きな天災がない上に、これまで戦火に見舞われたこともないニューヨークでは建築されてから100年近くたったビルも珍しくない。

 故ジョン・レノンが住んでいたことでも有名なダコタハウスなどは、建設されたのは1884年と19世紀の末である。それでもいまだ住居として使われており、マンハッタンでもっとも高価な物件の一つだ。

「できれば他人が使用した場所に住みたくない、というのは日本独特の文化かもしれません。ニューヨーカーは古い物件を改装、修理して住むのが大好きですよ。個性が愛され、隣と同じようなような住宅に住みたくないんです。また古いビルの多くは部屋も広く、天井も高く、今では作れないような贅沢なつくりになっている。窓が大きくて窓枠のデザインが凝っていたりなど。ですからきちんとメインテナンスがされている限り、建物が古いから家賃が安くなる、ということはないのです」

 新しく建てられる建物はスペースも小さめで、特にキッチンが狭い物件が多い。

「今はほとんど外食ですませてしまう住民も多いです。2年くらい人が住んでいたアパートメントのオーブンが新品のままだったこともあります。だからデベロッパー側も、そういったところは簡略化していく傾向にあります。ニューヨークの物件は内容に比べて割高なことは間違いない。ドアマンがいる、フィットネスジムがついている、近くに地下鉄の駅がある、公園がある、窓からの風景が良い、騒音が少ない、大きなスーパーができたなど、細かい条件でプレミアがつくのです」

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