2022年7月3日(日)

さよなら「貧農史観」

2012年3月16日

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昆 吉則 (こん・きちのり)

『農業経営者』編集長

1949年神奈川県生まれ。農機業界誌編集を経て、87年に株式会社農業技術通信社設立。93年に日本初の農業ビジネス誌『農業経営者』を発刊。

農村に富と雇用を生もう

耕作放棄地面積が増えることは悪いことなのか?
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 グラフにあるように、農水省の「2010年世界農林業センサス」によれば、全国に耕作放棄地が40万ヘクタールもあり、農業関係者はさかんにその危機を喧伝している。農水省は耕作放棄地を少しでも減らそうと、いまなお、さまざまな税金を投入している。 

 しかし、見方によっては、全国各地に点在する耕作放棄地は日本の農業・農村にとって、“宝の山”にもなり得る。

 数字上の話に過ぎないが、40万ヘクタールの耕作放棄地を1区画5アールの体験農園とすれば、800万区画できあがる。1区画年間5万円の会費で会員を募ったとしたらどうなるか? 単純に掛け算すれば、現在の日本の農業生産額8兆円の半分の4兆円もの売り上げを誇るエンターテインメント施設にもなり得る。

 前回の連載で触れたように、農地の移動にもマーケットメカニズムが働いており、どの地域でも地代を払える農業経営者に農地は集積されつつある。彼らの手によって、耕作放棄地が「体験農園」に生まれ変わってもいいのではないか。農村の風土や歴史、そこに伝わる人々の知恵や楽しみを享受できる場が出来れば、農村に大きな「富」と「雇用」をもたらすであろう。

 そうした農園は、個人の顧客だけでなく、企業の健康保険組合などの福利厚生施設として利用することもできるだろう。しかも、社員の健康・精神管理に役立つだけではない。体験農園で生産された農作物を、社内販売することだってできるはずである。

 農業側も、こうした仕組みを通じたサービスや農産物販売によって、従来の市場を通じて買い叩かれるものとは全く別の価値を打ち出し、人々に満足感を与えることができるだろう。

 現状の農地法をはじめとする〝貧農史観〟に基づく制度や規制、それに安住する農業人からはこうした発想は生まれにくい。

 だが、これらは決して夢物語ではないと筆者は信じている。白石氏のように、農地という風土そのものを経営資源として活かす能力を持つ農業経営者は必ずいる。こうした動きが面的に広がれば、耕作放棄地が“宝の山”になることは間違いない。

◆WEDGE2012年3月号より


 




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