米国社会では、いまだ神話のように根強い人気を誇るケネディ一家であるが、もともとはアイルランド系移民であり、アイルランドの首相が「ケネディ」スクールで講演するという心憎いばかりの演出も感じられる。
このほか、元学長のジョセフ・ナイ教授がモデレーターになって、「戦争は出口に向かっているのか」というテーマで、現代の戦争論について意見交換したのも印象的だった。
ナイ教授のような有名教授の講演は、ハーバードの中でも特に人気があり、学内で依頼されて講演することも多い。2月初旬にナイ教授が「アメリカは衰退しているか」といった演題で講演し、中国が経済的に隆盛しているがアメリカが衰退するということはない、と力強く述べると多くの聴衆から拍手がおきていた。
ケネディスクールのフォーラムは、その時々のトピックを扱っているだけに関心は高く、毎回、200人ぐらいの聴衆が集まる。ほとんどのイベントが一般公開されているので、近隣のマサチューセッツ工科大学やボストン大学などの学生や大学院生、地元の住民なども聞きにくる。元首級の講演は聴衆が多くなるため、インターネットで申し込んだ上での抽選となる。なかなか当たらないが、ほぼ全部の講演の様子がビデオに収められて、後日インターネットで公開されるため便利だ。
ハーバードだから講演依頼を受け付ける
著名人が忙しい時間を縫ってハーバードに足を運び、講演や議論を行うのは、ハーバードが持つ強い「磁力」ともいえる。ハーバードに呼ばれて講演することはその人の名誉であるため、世界のあらゆる著名人を呼ぶことができるのだ。
旧ソ連の反体制作家として脚光を浴びていたソルジェーニツイン氏が当時、世界の多くの大学から寄せられた講演依頼を一切断っていたにもかかわらず、1978年に行われたハーバードの卒業式の講演だけは断らなかった。その理由を聞かれて「Harvard is Harvard (ハーバードはハーバードだから)」と答えたという話をいまだ関係者は誇りにしている。
1978年からはじまったケネディスクールのフォーラムが、途切れることなくいまだ営々と続いているというという事実は、ハーバードが昔も今も変わらずに世界最高の知の殿堂であることを物語っている。
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