自動車不況以外にもインド経済が抱える問題点とは
しかしそんなモディ政権の苦肉の策もむなしく、RBI(インド準備銀行…日本の日銀にあたる)は、10月4日インドの2020年3月期の経済成長率を従来の6.9%の予想から、6.1%と大幅に引き下げることを発表した。8月の実態経済を見ての判断とのことだが、体感としてインドのビジネスの世界で感じていた6.9%という数字とのギャップにRBIがお墨付きを与えた形になったようだ。
RBIが懸念しているのは、6・7・8月の自動車不況に加えて「金融不安」である。
昨年10月インドの大手ノンバンクIL&FSが社債のデフォルトを起こし、そこから金融業界全体への信用不安が広がった。この時のインド政府の対応は迅速で、即座に経営介入を発表。経営陣を刷新するなど適宜必要な手を打つことで金融危機を回避する形となった。
その後もRBIは、
「インド銀行業界は堅固であり、金融恐慌が来る理由は見当たらない」
「RBIはノンバンク業界を注視し続けている」
「ノンバンクでの次のデフォルトは起こらない」
と声明を出し続けているが、皮肉にもこのような声明を昨年のIL&FSのデフォルトから1年たった今でも出し続けないといけないこと自体が、インドの金融不安が払拭しきれていないことへの証左となっている。このノンバンク問題は日本ではあまり有名でないが、インドの経済紙では週に一度は1面を飾るくらい注目され続けている問題で、未だに根本的解決がなされていない。
この経済成長率の下方修正に加え、RBIはその政策金利も0.25%引き下げ5.15%になることも発表した。これで今年に入り5回連続の「引き下げ」となる。RBIやインド政府は金利引き下げによる貸し出しの増加 → 設備投資の増加を期待しているのだが、上記の自動車不況により市場全体が委縮している中でどれだけ設備投資が増えるかは不透明だ。
さらに、政策金利の引き下げは当然貸し出し金利の下落にもつながるため、上記の金融問題で弱っている金融業界の体力を奪うことにもなりかねない諸刃の剣とも言える。逆に言うと、景気対策としてインド政府が打てる手が限られてきているとの見方もでてきている。