2024年12月26日(木)

インド経済を読む

2019年9月12日

 「500万円払わないと日本へ帰さない」といういきなりの通達?

 これは実際に今インドにおいて少なくない外国人の身に起きていることだ。

 外国人がいつものようにインドでの出張を終えて、開放感に包まれながら母国へ向かう便に乗ろうとインドの空港のイミグレーションカウンターに行くと、こう聞かれるのだ。

  「お前はインドで納税したのか」と。

 身に覚えがないその人は「???」と不思議な顔をするだけなのだが、係官はこう続ける。

 「お前は去年インドに182日以上いるじゃないか。納税しているのだったら確定申告書を見せろ。出せないのだったら出国させるわけにはいかない!」

インド・チェンナイ空港(undefined undefined/gettyimages)

 この連載で何度もお伝えしているように、ここ数年でインドのあらゆる分野でのコンプライアンスは格段に厳しくなっている。そして、民主主義国家でありかつ超格差社会であるインドでは「お金持ちからたくさん税金をとります」「お金持ちには厳しくします」という方向の政策は支持されやすい。物価水準の差もあいまって、こちらに来れば軒並み「お金持ち」のカテゴリーに入れられてしまう外国人だとそれはなおさらだ。

 インドの確定申告においては原則海外に保有するすべての資産を1ルピーに至るまで開示しなければならない。外国人なら母国に残してきた預金残高など正確に把握していない人も多いだろう。しかし、インド税務当局は基本的に3年以上インドに滞在することにより「通常の居住者」に該当するようになった外国人にもインド人と同様にこの義務を課している。

 毎度確定申告シーズンになると、自分の預金残高を把握するために家族や両親に預金通帳の写真をメールで送ってもらう駐在員がたくさんいるのもこのためだ。その財産に即課税されるわけではないが、厳しさで有名なインド税務当局に自分の財産を開示することに戸惑いを覚える人が多い。

 そして冒頭のようなインド出張者のケースであってもインドに年間182日以上滞在する場合は、その年「インド国内でコントロールしたとされる所得」に対してインドにて課税がなされる。それがどこで支払われたかどうかは関係ない。もちろん租税条約により183日以下の滞在の場合は短期出張者の減免制度があるものの、それも越えている場合は課税を避けることはできない。

 そしての納税が証明できないと、出国すら認めないという事例がこの1、2カ月で増えている。その課税は該当する過去年度すべてに課せられるので、所得の高い人であればその課税額は数百万、ヘタをすると数千万円にものぼる。その納税が終わらないと出国できないといわれた日には目の前が真っ暗になるだろう。


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