残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務化など、働き方改革は一段と加速する。しかし、改革の先頭を走っている企業では、改革の揺り戻しともいえる新たな動きも出てきている。働き方改革先進企業の「今」を追った。
時短に加え、社員が勤務時間外を有効活用できるよう模索するのが日本マイクロソフトだ。同社はこの10年で総労働時間を13%削減し、今年8月には週休3日制を試験的に導入した。さらに休暇中に、社員が資格取得やセミナー参加といった自己啓発やボランティア活動に関わる経費、さらには国内旅行の交通費・宿泊代などに使える最大11万円相当の補助を行った。
「顧客の多様なニーズを満たす新たなアイデアや付加価値を生み出すためには、社員にさまざまな経験を積み重ねてもらう必要がある」。コーポレートコミュニケーション本部長の岡部一志氏は自己研鑽を促す理由をこう語る。
育休社員のキャリアをつなぐ
育児休職者に対し「休みながら働く」というハイブリッドな制度を導入したのが三井住友海上火災保険だ。「保育園に子供を預けられず、やむを得ず育休期間を延長すると、職場復帰への不安や焦りも膨らむ。そんな女性たちの要望で、休職中に働くことも選べる制度創設に至った」と人事部働き方改革推進チーム課長の荒木裕也氏は語る。
18年4月、育児休職期限の1年間延長に合わせ、育児休職者の「在宅勤務」を開始した。集計作業やデータの加工のような定型業務や人事イベントの企画などの事務業務を切り出しクラウド上に上げ、育児休職者はその中から、自身の経験が生かせるような仕事を自由に選んで自宅で作業を行う。
報酬については業務ごとに「1100円」「2万円」など事前に金額が設定されている。利用者はのべ約20人、月20~30時間働く社員が多いという。
利用している社員からは「仕事復帰にむけて意識が向上できた」「育児に対するメリハリもつけられる」など、好意的な意見が多く寄せられており、労働時間削減で猫の手も借りたい職場からも好評だという。