2024年2月21日(水)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年10月27日

敵陣に攻め込めなかったNZ

オールブラックスのハカに「V字」で向き合ったイングランド(写真・筆者)

 後半の主役もイングランドだ。開始から2分でPGを狙い(不成功)、5分でラインアウトモールからトライ(これはモール内でボールを落とし無効)を狙ったが、どちらも得点には繋がらなかったもののイングランド優位の印象を強くした。その後、8分にPGを決め「13-0」とイングランドの優位は強まったかに見えた。

 しかし、16分にイングランドのゴール前でのラインアウトのキャッチミスを突いてニュージーランドのアーディー・サベアがトライを返し「13-7」。ニュージーランドが逆転のきっかけを掴んだかに見えたが、そこまでだった。イングランドは21分と28分にPGを決め「19-7」と突き放し試合を決めた。

 この試合をテリトリーの面から見るとイングランド62%、ニュージーランド38%である。いかにニュージーランド陣内で試合は進められたのかわかりやすい。その点について、ニュージーランドのスクラムハーフ、アーロンスミスは「相手陣内に行くことができなかった。イングランドはディフェンスで非常によいプレッシャーをかけてきた。特にブレイクダウンで圧力を掛けられ、我々が突破しようとしていたところでターンオーバーをされた。クリティカルな場面でそういった状況がおきた」と語り、「他の試合ではスムーズにゲームプランを執行できたのに今日はイングランドのディフェンスのプランが優れていた」と語っている。

 イングランドはフィジカル面でもメンタル面でも早い段階から優位に立つ戦略を立てていた。それが前半の入りで見せた集中力であり、そこからのトライだ。あの一撃が一試合を通してニュージーランドを苦しめ続けたとみていいだろう。それ以降、高いディフェンスラインを武器に一度も流れを譲ることなくイングランドはニュージーランドの攻撃を防ぎ試合の主導権を握り続けた。ラグビーは15対15でひとつのボールを奪い合う競技だが、心と心の戦いでもある。ゆえにいかに先に相手の心を攻め崩すか。そこに勝敗のカギが隠されている。

 この日、ニュージーランドの反撃の糸口をハードなタックルで芽を摘み続けたサム・アンダーヒルは「ニュージーランドは非常に強い選手たちだから、最初から仕掛けていかなければ良い終わり方ができない。途中でスイッチオフするような瞬間があれば強烈なアタックを食うので常に我々は全開でいかなければならなかった。それが80分までできたと思っている」と勝因を挙げた。

 一方、ニュージーランドのスティーブハンセンHCは「イングランドは素晴らしいチームだった。この試合にエネルギーの全てを費やしてきた。負けを認めるのはつらいが我々は負けを認める。痛みはあるが恥ずかしさはない。全力を尽くしたが、我々よりも優れたチームに負けただけ。オールブラックスに後悔はない。今は残念だが、明日の準決勝の敗者と戦うことにエキサイトしたい」と敗戦を振り返った。

 また、キアラン・リード主将は「すべてを出し尽くしたが追いつけなかった。我々がどれだけハードワークしたか見ていただいた通り。選手は全てを出し切ろうと戦った。何が欠けているのか今はわからないがこれからも前進していきたい」と語った。

 イングランドのエディー・ジョーンズHCは、「相手には2度優勝している素晴らしいコーチがいる。巧みな試合をしてきたので全力を尽くさなければならなかった。我々は世界最高のチームになろうとプランを立てて2年半準備してきた。毎日のハードワークとこれまでの準備が習慣化して、この試合に出すことができた。選手はエネルギーを持って規律を守って最後まで戦ってくれた。歴史はまだ作られていない。来週の試合が残っている」とすでに頂点への道を見据えていた。

 可能な限りの準備を積み重ねるエディー・ジョーンズHC。W杯における勢力図を書き換える準備はすでに整えていることだろう。

  
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