2024年12月22日(日)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年9月26日

釜石鵜住居復興スタジアムで声援を送る地元の小中学生(写真・志賀由佳)

 駅の改札を出ると、日本製鉄釜石製鉄所に掲げられた「ようこそ 鉄と魚とラグビーの街 釜石へ」という大きな文字が飛び込んできた。この街は2011年3月11日に9メートルを超える津波に襲われ、未曽有の大災害に見舞われた。それから8年半の月日が経ち、被災者や復興に携わる関係者、全国のラグビーファンなど様々な人たちの夢や希望が形となってラグビーワールドカップ(W杯)の開催を迎えた。取材班は街の熱気を感じようと試合前日から釜石に入った。

 駅から10分ほどの距離にあるファンゾーンに向かった。街角には大会ボランティアや高校生ボランティアが立ち、みんな笑顔で出迎えてくれる。道すがら、今年3月に全線復旧した三陸鉄道の列車が走り抜けていった。新しく再生された街並みのあちこちに、津波到達地点の目印が赤く記されている。

 笛の音と歓声が上がっている一角があり覗いてみた。すると、シニアの女性が赤いラグビーボールを持って「トライ!」と叫びながら目の前に飛び込んできた。66歳のこの女性も、ジムの帰りににぎやかな声を聞きつけてやってきたという。話を聞くと「新日鉄釜石のV7時代は何度も試合の応援にいったけど、こうしてラグビーボールを持って走るなんて始めて。一度やってみたかったんです、トライ!」と息を弾ませ答えてくれた。

老若男女を問わず参加できるストリートラグビー(写真・筆者、以下同)

 女性がプレーしていたのはラグビーボールを使ったミニゲーム「ストリートラグビー」。3対3に分かれて1分ハーフで対戦し、タックルはなし。最大の特徴は両チームにインストラクターが入り、初心者でもトライができるお膳立てをしてくれることだ。「ディフェンスをすり抜けトライをするというラグビーの醍醐味を初心者でも感じてもらえることができる」と考案者の一人である小山裕昭氏が教えてくれた。しかも参加者全員にラグビーボールが配られる。「野球やサッカーのように公園でラグビーをする人はいない。ボールを配ることでラグビーを身近に感じてもらいたい」とその狙いを語る。

 ストリートラグビーは14年に東京で企画され、釜石では16年から始まった。市民ホールでのクリスマスパーティーやラグビー関連のイベントに合わせて行われ、これまで10回以上開催されてきた。成人式の日には振袖姿の女性が何人もトライを決めたという。


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