ラグビーワールドカップ(W杯)大会3日目の22日、日本と同組(プールA)の「アイルランドvsスコットランド」が横浜国際総合競技場で行われた。アイルランドの世界ランクは2位(前日のニュージーランドの試合結果により1位と2位が入れ替わった)。今大会は優勝候補の一角としての存在感を示している。対するスコットランドは同8位で、91年の第2回大会で4位という成績も残している。日本が目標としている決勝トーナメント進出を果たすためには、この両チームのどちらかを超えなければならないため、両チームの仕上がりが気になるところだ。
試合は前半6分に圧倒的プレッシャーからアイルランドが先制トライをあげると、14分にもラインアウトから強力フォワードがスコットランドゴールラインを陥れ「12-0」。その後、20分にスコットランドがペナルティゴールで3点を返すも、24分にアイルランドがトライを重ね「19-3」で前半を終えた。チャンスをものにしたアイルランドとチャンスをミスで失ったスコットランドの明暗が分かれた。その要因はアイルランドの圧倒的なプレッシャーの威力だ。
スコットランドは反撃に転じる暇もないまま流れを掴まれてしまった。後半は開始から15分。アイルランドはハイパントからプレッシャーを掛け、スコットランドの処理ミスからトライを重ねて「24-3」。さらに27分にペナルティゴールを決め「27-3」で試合を決めた。
試合後の会見で、スコットランドのグレゴー・タウンゼンドヘッドコーチ(HC)は「試合に臨むエネルギーが低くプレーの精度が悪かった。アイルランドはこちらのミスをエリアに変え得点に結びつけた。後半までその劣勢を覆すことはできなかった」と振り返り、アイルランドのジョー・シュミットHCは「スコットランドにスペースを与えてはいけないと前半から厳しいプレッシャーを掛けることができた。いいかたちで初戦を終えることができた」と語っている。どちらも日本を侮れない相手と見ており、残りの3戦に懸けるという点では共通しているようだ。
伝統の一戦は、アイルランドの圧力とハーフ団(9番と10番)のゲームメイクの巧みさが印象に残った。そして、何といっても会場の雰囲気が国内の試合にはないものだった。当日詰めかけた観衆は63,731人。スタジアムに響くアイルランドの歌声は幾重にも重なり会場の熱を押し上げた。観客からはどちらのチームにも拍手や声援が贈られたはずだが、スコットランド側にはアウェー感が漂っていたかもしれない。
この両チームの初対戦は1877年に遡る。戦績はアイルランドの63勝67敗5引分けとほぼ互角。この試合でアイルランドが一つ勝ち星を加えた。ひとくちに伝統の一戦と言っても国の存立の背景を鑑みるに、人それぞれ悲喜こもごもの歴史が刻まれているはずだ。関連して触れておくと、アイルランド代表は、アイルランド共和国と北アイルランド(英国領)による統一チームである。二つの国にまたがった統一のラグビー協会があり、一つのチームということなのだ。サッカーではそれぞれ単独の代表チームがあるのに対し、政治や宗教、民族など、様々な歴史的背景によって国が分断されたあとも一つの代表チームであり続けている。これもラグビー文化を示す一例ではないだろうか。