“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年9月26日

»著者プロフィール

スタジアムに響き渡る子供たちの合唱と声援

 9月25日は朝から秋空が広がる快晴だった。「フィジーvsウルグアイ」が行わる釜石鵜住居復興スタジアムには14,025人の観衆が詰めかけた。会場へ向かう人の波は熱気に包まれていた。来場者とボランティさんたちが「こんにちは!」とハイタッチをして笑顔のキャッチボールを交わす。誰もがこの日を待ち焦がれていたことが伝わってくるようだ。

 オールドファンにはなじみ深い往年の名プレーヤーの姿もあった。観客席で「スクラム釜石」の石山代表の姿を見つけた。「あっという間の8年でした。今日は青空が綺麗ですね。ほんとに良い日になりました」と目を細めた。「ファンゾーンの前で小学生の頃に被災した高校生たちが元気にボランティアをしていました」と伝えると、「それは良かった。あのときの小学生がもう高校生ですか」と感慨深く頷いた。口数は少ないが、目尻のしわになんともいえない優しさが溢れていた。

 試合前にはブルーインパルスが美しい編隊を見せ、スタンドでは市内の小学生と中学生による「ありがとうの手紙 ♯Thank You From KAMAISHI」の合唱が胸を熱くさせた。そして両国国歌斉唱のまえに震災で亡くなった方々を悼んで黙とうがささげられた。

被災時の支援に感謝の気持ちを示す釜石の子供たち

 試合は世界ランク10位のフィジーが同19位のウルグアイをフィジアンマジックで翻弄するかと思われたが、良い意味でその期待は裏切られた。先制点こそフィジーがあげたもののパスミスや落球などのイージーなミスが続き、まったく流れがつかめないうちにウルグアイが前半だけ3トライをあげ「12-24」で前半終了。後半に入り、最後にフィジーが反撃に転じるもゴールキックの精度が低く思うような流れにはならずノーサイドの笛が鳴った。フィジーは初戦のオーストラリアから中3日のためメンバーを大幅に変えてのチーム編だった。対するウルグアイはこれが初戦。肩を落とすフィジーに対し、歓喜の雄たけびをあげるウルグアイ。試合後の明暗は色濃く分かれた。それにしても小中学生たちの運動会のような応援はきっと選手たちにも伝わっていたことだろう。次戦への力になってくれることを期待したい。

ボランティアが一列になって観客をお見送り

 試合後、バス停や駅に向かう観客とお別れのハイタッチをするボランティアたち。これほど熱狂的な歓迎を受けるとは、やはりこの地はラグビーの聖地なのだ。釜石には伝説化したチームのレガシーが残っている。それはラグビーを通して人と人とを繋ぐ力だ。この世代を超えて受け継がれた力こそが、新たな歴史を生み出す原動力になる。

 震災直後にはW杯招致の旗を堂々と振れなかった釜石だったが、この日のスタジアムには何本もの大漁旗が大きく振られ、声援を送る子供たちの手には小さな旗が揺れていた。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る