“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年10月21日

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 9月20日に開幕したラグビーワールドカップの決勝トーナメントが始まった。これまでヨーロッパの伝統国を相手に歴史的勝利を2度経験した日本代表。世界ランクを6位まであげ、まぐれでも、奇跡でもない実力を世界に示し、悲願の準々決勝に駒を進め南アフリカと相まみえた。日本ラグビー史にとっては今大会3度目の歴史的な試合となったが、結果は南アフリカの分厚く強力なディフェンスの前に「3-26」という厳しい現実を突きつけられ、ベスト4進出の夢は阻まれた。

誇りとリスペクトと感謝の心の大切さを伝えた日本代表(写真・松本かおり)

 だが、ワールドカップ優勝2回を誇る南アフリカと前半拮抗し「3-5」で折り返したことは大いに評価されるべきで、試合後南アフリカのヨハン・エラスムスヘッドコーチは「ハーフタイムはとても緊張していた」と語り、「前半はプレッシャーを掛けられた。自分たちに自信を取り戻すことが大事。選手たちには落ち着いて自分たちの戦術を実行していこうと伝えた」。

 日本がアイルランドとスコットランドを破って勢いがついていることと日本の応援が力強いことも警戒していたようだ。日本が南アフリカと同じ土俵で戦い、真っ向から勝負を挑んで、戦術的にも精神的にも揺さぶっていたということの表れだろう。ホームアドバンテージがあったことは確かだ。東京スタジアムには終始「ニッポン」コールが沸き起こり選手たちの背中を押していた。ノーサイドの瞬間、敗戦の落胆よりもリスペクトの拍手と歓声が選手たちを包んだ。80分間桜のエンブレムを胸に身を挺し続けたものたちへの贈物と言えるだろう。

悲願の決勝トーナメントに臨む日本代表(写真・筆者)

 この試合も台風19号の犠牲になられた方々へ黙祷が捧げられ、両国国歌斉唱後、19時15分を少し回ったところで南アフリカのキックオフで始まった。日本はファーストコンタクトでポイントを作り、直後に松島幸太朗へのキックパスで右へ展開。相手の強いフィジカルと鋭い出足をかわす意図だろう。プール戦では強敵アイルランドとスコットランドには、パスで繋いでボールの保持率を高めて相手を崩す戦い方をして、サモアとロシアにはキックを使ってゲームを組み立ててきた。プール戦よりシビアな戦い方が要求される決勝トーナメントだけに、日本もプール戦では見せなかったオプションを準備してきたはずだ。キックオフ直後のキックパスもそのひとつだろう。

 だが、開始から3分。この試合を象徴するようなトライが生まれた。日本陣内22mライン付近のスクラムを押し込まれ、ショートサイドから一気に相手の11番、左ウイングにディフェンスをかわされゴールラインに飛び込まれたのである。ほんの一瞬の「間」であり、出来事だった。攻める側にはスクラムを押すことの重要性を示し、押される側にはディフェンス面でのマイナスの影響を物語っている。プレー自体がシンプルゆえに力の差を見せつけられた思いがした。トライ後のコンバージョンは不成功で「0-5」。南アフリカが先制した。

 その後、9分に南アフリカの1番がイエローカードで10分間の退出。15人対14人という絶対有利な状況となり、13分には6人が素早くパスを繋いでエース福岡がタッチライン際を突破して会場を沸かせ、18分にスクラムからペナルティを奪い、ペナルティゴールを狙って「3-5」と迫った。司令塔の田村は「キックからアンストラクチャーな状況を作ろうと思っていたんですが、相手のシンビンによって、いろいろなことができるようになってしまい逆にブレてしまった。もっと蹴りたかったんです」と振り返った。

 その後、日本は絶妙なパスワークとランプレー、キックを使ってボールの保持率を高めるも南アフリカのディフェンスは綻ばない。対する南アフリカは何度か日本陣内で決定的なシーンを作り、あわやトライかというシーンを作り出したが、ノックオンやスローフォワード、ペナルティで自らトライチャンスを潰していった。勝ちに流行って自滅するパターンにはまったかのような様相を呈し「3-5」で前半を終えた。ちなみに前半の日本のボールの保持率は73%で南アフリカが27%だった。それだけ日本のアタック機会が多かったということである。

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