“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年10月14日

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ボールを奪いに行くリーチ主将とトンプソン選手(写真・志賀由佳)

 宿敵スコットランドとの死闘を制し、悲願のワールドカップベスト8を達成した日本代表。この高みに到達した境地はいかなるものなのか、そして次に彼らが見据えるものとは? 試合後、高揚感漂う選手たちが語った。

 2019年10月13日、プールA最終戦で日本はスコットランドを破り、今大会2度目の歴史的瞬間を迎えた。1987年の第1回W杯以来、初の決勝トーナメント進出を決め、目標としていたベスト8を達成したのである。
 
 会場となった横浜国際総合競技場の6万7666人の大観衆がその歴史的瞬間に立ち会った。まばゆい照明に映し出された勝者と敗者の明暗は色濃く、鮮明だった。

決戦に臨むジャパン(写真・筆者)

 日本はこれまで開幕戦でロシアを破り、優勝候補にも挙げられていたアイルランドを退け、サモアにも競り勝ち、勝点14でプールAの首位を走ってきたが、日本と同プールのアイルランドは前日にサモアを47-5で破り決勝トーナメント進出を一足先に決めていた。残るひと枠を日本とスコットランドが直接対決で決めるという大一番である。

 3戦3勝で勢いに乗る日本が勝ち点2以上を挙げれば、1位で決勝トーナメントに進出が決まる。対するスコットランドは敗れればプール戦敗退という後のない状況で伝統国の意地を見せるか、注目の一戦となった。ただ、両者の過去の対戦成績を見る限り日本は1勝9敗で、W杯では勝ったことがない。また2015年の前回大会はこのスコットランドに唯一の敗戦を喫している。善戦はすれども勝てなかった日本代表の歴史の象徴のような対戦相手なのだ。

 試合前、台風19号の犠牲になられた方々へ黙祷が捧げられ、両国国歌斉唱後、19時45分を少し回ったところで日本のキックオフで始まった。敵陣10メートルラインにぎりぎり届くような小さく転がすキックでスコットランドの機先を制した。

 それは試合後、スコットランドのゲームキャプテン、グレッグ・レイドローが「トリックプレー」と表現し、その後「勢いを与えてしまった」と語ったような意表を突いたものだった。

 試合は序盤からピンチとチャンスが表裏をなしたように目まぐるしく動いた。開始から6分、スコットランドはキックパスから先制トライを挙げ試合巧者ぶりを見せた。しかし、日本の強みは相手の先制点にもピンチにも動じないことだ。2015年の前回大会から積み上げてきた自信の表れだろう。

 日本は15分にペナルティゴールを外すも、17分には左ショートサイドを攻め入り、フルバックのウィリアム・トュポウから福岡堅樹にボールが渡り、逆サイドから回り込んだ松島幸太朗に倒れこみながらのパスが通ってトライを挙げ、ゴールが決まって「7-7」の振り出しに戻る。この日の日本はショートサイド(狭いエリア)に福岡、松島というスピードのある両ウイングを走らせるオプションを多用している。スピードと俊敏性と巧緻なパスワークという強みを生かしたアタックだ。そこにフォワードのおとりのランナーが絡むことによってディフェンスの的を絞りづらくさせている。

 その後、25分にもウイング松島の突破から縦につないで最後は1番稲垣啓太がトライを決めた。さらに前半終了間際には相手ドロップアウトから、蹴られたボールを左に展開してラファエレ・ティモシーのディフェンス裏へのキックで福岡がトライを重ねて(ゴール成功)「21-7」で前半を終えた。

 しかし、この流れのまま終わる相手ではないだろうと思っていたところ、後半開始から2分で日本の勝利を象徴するようなプレーが飛び出した。

 スコットランド陣内10m付近のディフェンスから、福岡が相手のボールキャリアーからボールを奪い取って、そのままゴールラインに走りこんでトライを奪ったのである。まさに強さとスピードのなせる技だ。

 「しっかり前に出てディフェンスしようという意識していたところへ、センターのティモシー選手がいい形でプレッシャー掛けてくれたので、あのトライはティモシー選手あってのトライだと思います。結果だけではなく、そこに至るプレーがありますのでそこも見てほしい」と福岡は振り返り、また、「宮崎の合宿では相手ボールを奪う練習をしてきたのでそれが生きたのかなと思います」と試合後に語っている。

スコットランドの反撃

 流れを掴むという点では後半開始早々のトライの意味は大きかったはずだ。しかし、そこは伝統国。経験豊富な試合巧者はじりじりと日本を追い詰め始めた。49分には日本陣内ゴール前の攻防からラックを連取してスコットランドがトライを奪い、さらに54分には日本のタッチキックからのクイックスローインから一気に日本陣内に攻め入りトライを重ねた。どちらもゴールが決まり「28-21」と日本に迫る。

 流れは完全にスコットランドに傾き、71分からは日本は防戦一方になった。スコットランドはフィジカルの強みを生かしてディフェンスに食い込み、突き崩し、猛攻を見せるもゴールラインを背負った日本は一線を越えさせない。辛抱強く、しぶとく粘り、攻め込まれても集中し切って、まるで一つの生命の塊のようでもあり、ど根性などという薄っぺらい言葉を超えたものだった。

 集中した日本は辛抱強くチャンスを待って78分45秒にラックでターンオーバーに成功。そのままラックからラックへポイントを動かしながら時間を使い切ってノーサイドの時を待った。そして横浜国際総合競技場は歓喜の渦に包まれた。最終スコアは「日本28-21スコットランド」。日本はグループAの首位で決勝トーナメント進出を勝ち取った。

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