W杯優勝候補の強豪アイルランドに見事初勝利したラグビー日本代表。「奇跡」ではなく「必然」の結果だと口を揃える選手たちが歴史的な一戦を振り返る。
地鳴りのような歓喜
エコパスタジアム(静岡県)は歴史的勝利の瞬間、地鳴りのような歓喜に震えた。
ワールドカップ日本代表の第2戦は世界ランク2位のアイルランド。日本は過去9回対戦して全敗。ラグビーの伝統国であり優勝候補の一角を占めるヨーロッパの強豪である。
日本は序盤こそアイルランドの巧緻さに後手を踏んだが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻し、しぶとくアイルランドの攻撃の芽を摘み取って「19-12」で勝利を収めた。
試合は前半から動いた。開始から4分、日本がペナルティゴール(PG)を狙うも得点はならず、8分にはアイルランドが日本陣内で得たペナルティから逆サイドにキックパスでトライをねらうというオプションを使った。
アイルランドはシンプルでオーソドックスな攻めを用いることが多い。タッチキックからラインアウトモールでトライを狙うという力技かPGという選択肢があった。だが、意表を突いたのだ。
孫氏の兵法に「兵は詭道なり」という言葉がある。狭義には敵の戦力が充実しているところを避け、備えのないところを攻めるという意味なので、日本の力・強さを十分理解したうえでそこを避けたということだろう。
アドバンテージが出たらキックがあると意思統一して修正
その後、13分のトライも20分のトライもフォワードの波状攻撃から一転、キックパスによって生まれたものだ。試合後、フルバックの山中亮平は1本目のトライについて「ボールが見えていなかった。蹴られたあとの戻り方も悪かった」と振り返っている。以降、アドバンテージが出たらキックがあると意思統一して修正を図った。その後もアイルランドは日本の固いディフェンスをかわすようにキックのオプションを使ってきたがディフェンスを崩すまでには至っていない。
この間、日本はPGを1本返しているので「3-12」。その後、日本は田村が2本のPGを決め「9-12」で前半を折り返す。リザーブスタートだったリーチ・マイケルが選手の負傷交代によって早めにピッチに入ったことも大きく流れを手繰り寄せた要因だろう。
司令塔のスタンドオフ田村優の恐ろしく冷静に点差を詰め寄っていく試合運びがファンにとっては頼もしかったことだろう。ゴールをねらう瞬間の静けさはアイルランドも日本もなく、みんなが試合と一つになって共に作り上げていた証である。
後半8分日本ボールのスラクラムがペナルティを取られ、タッチキックからゴール前ラインアウトというピンチをロックのトンプソン・ルークが相手ボールをスティールして救った。