2022年7月6日(水)

名門校、未来への学び

2020年1月16日

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鈴木隆祐 (すずき・りゅうすけ)

ジャーナリスト

1966年長野県生まれ。法政大学文学部在学中より出版社で雑誌編集を始め、その後フリーに。著書に『名門高校人脈』(光文社新書)、『名門高校 青春グルメ』(辰巳出版)ほか。

アクティブ・ラーニング(AL)にも一脈通ずる

 実はこれ、最近流行りのアクティブ・ラーニング(AL)にも一脈通ずる。コミュニケーションに重きを置くALだが、そこにも型は自ずと求められる。いきなり本題に入らず、アイスブレーキングを試みるといったことだが、日本人にとって礼はより大切。まず正しい敬語や礼儀が身に付いていないと、なかなか相手も胸襟を開かない。

 むろん桜蔭も、同校なりの対話型教育を行う。齊藤校長自身、中1に道徳を教えるが、そこでも時にテーマを与え、グループ討議をさせる。取材日は一昨年、新聞に掲載されて話題となった「読書はしないといけないの?」と題した大学生の投書を材に取り、生徒の読書観を引き出していた。この何十年かの平均読書時間の推移も、併せてプリントにしてある。

 生徒らもスマホに接する機会は多く、SNSや動画視聴に時間も奪われるので、大学生の問いかけを真っ向否定する意見は少ない。「教養を高めるために読書は必要だが、強制はむしろ本嫌いを生む」といった意見が多かった。実はこうした侃々諤々のやり取りがスムーズにできるのも、彼らが話すのと同時にプリントに考えを書き付けているからだ。考えて書く、要は論考を授業の中でこなしてしまう。

 

 それが桜蔭流の学びの型だと、他の授業を見ても思えた。礼法で取材に応じてくれた生徒も理解していると思うが、桜蔭の濃密な授業は「ただ板書を写すだけ」では済まない。例えば、高2の現代文では、江藤淳の『明治の精神』を採り上げていたが、生徒は小グループに別れてディスカッションもする。プリントを中心に進められるが、そこに自分の意見を最初に、次いでグループでまとめた考察も書き入れるようできている。しかも、かなり細かい。

 

 書きながら考えをまとめないと、展開の早い授業に追いつけないのだ。桜蔭の重視する、こうした「型」は今後の教育を決定づけるだろう。昨今、文部科学省の肝煎りで、国語や英語の、「聞く・話す・読む・書く」の4大能力のうち、前者2つをやたら重視するようになったが、書く力がなくては、政治や高度なビジネスの場などでは、やはり通用しない。

 

 確かな読み書きの能力がいっそう求められるのだが、それも「考えながらすぐに体で実践する」型に持ち込みたい。そのためにITツールも、ネットでのコミュニケーションもあるのだろう。だが、それらを駆使する上でも、体幹を鍛え、心をクリアにしておきたい。桜蔭の慎ましくも逞しい生徒たちのように…。

  
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