2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2012年4月19日

第2勇新丸乗組員の眼前にナイフを向けるシーシェパード活動家
(2012年1月18日 日本鯨類研究所提供)

 私は3月に刊行した『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)で、環境保護や動物愛護の分野で一定のビジネスモデルを成立させている組織や企業の総体を「環境保護産業」や「動物愛護産業」と位置づけ、その収益構造を明かした。業界はアニマルプラネットのようなメディアもその一翼を担い、中には、和歌山県太地町のイルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」のように間違った情報や誇張表現を使って、金を儲ける「ねつ造のプロ」たちがいる。「ザ・コーヴ」によって、「Taiji」の名は世界中のイルカ保護活動家の間で知られるようになり、毎年、漁期になると、シー・シェパードだけでなく、各国の自称・環境保護団体のメンバーが来日するようになった。法的規制もなく、続々と日本に上陸している実態は前回の記事で指摘した。

 環境テロリストは、業界が作り出す都合の良い情報やガセネタの世界にどっぷりとはまり、正常な判断を失った者の中から誕生する。彼らは、地球保全や動物の生きる権利を守るために「動植物に依存する社会を絶対に許さない」という“環境原理主義思想”を抱え、人間を敵と見立てて刃を向けるのである。

ディスカバリー・チャンネル
立てこもり事件の意外な犯人

 いつの世も過激派は、穏健な手法をとる身内にも近親憎悪のような嫌悪感を抱き、流血の制裁を加える。2010年秋、環境テロの分野でも近未来の原理主義者たちの姿を暗示するような衝撃的な事件が起きた。

 この事件は、エコテロ事案を扱ってきた治安関係者を驚愕させた。加害者と被害者が想定外の構図だったからだ。

 標的となったのは、ディスカバリー・チャンネル。シルバー・スプリングの本社に武装テロ犯が侵入し人質を取って立てこもったのである。テロ犯は爆破装置を社屋に持ち込み、傘下の全ての番組で「地球の最大の脅威である人類を減らすように仕向ける内容の番組を放送しろ」と要求した。

                  ◇         ◇         ◇

 新学期が始まった9月1日の昼下がり。視聴者を喜ばせるためにティラノサウルスやトリケラトプスの模型が展示されてあるディスカバリー・チャンネル1階ロビーに、銃で武装した男が突然、入ってきた。男は数回、天井に向かって引き金を引き、「誰も一歩も動くな」と叫んだ。男は爆破装置を身体に巻き付けていた。

 当時、1500人以上の従業員が社屋にいた。ロビーは昼食をとろうとする大勢の同局関係者たちが行き交い、乳児から5歳までの100人の子供も同局の託児所に預けられていた。

 乾いた銃声は人々をパニックに陥れた。ほとんどの人が社屋から逃げたが、男は3人のスタッフを人質に取り、ロビーで立てこもった。人質の1人が救出された後、当時の緊迫した状況をこう振り返った。


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