地元からも歓迎
不動産業者が長崎に物件を持つ資産家と取引を行う場合、高額の住宅やビルの取引のついでに地元業者から「処分に困っているボロ物件があるので、一緒に処分してもらえないか」といった依頼を受けるケースがある。こういう時に、ボロ物件の「障害物」を購入してあげると不動産業者からも喜ばれることが多く、これが縁でその後も物件を紹介してくれたりするという。地元の不動産業者とは持ちつ持たれつの関係だ。
また、引き取り手のない老朽物件などについて相談を受けている長崎市役所のまちづくり推進室から紹介されたこともあり、地元から歓迎されている。
総務省が19年4月に発表した全国空き家調査によると、846万戸もの空き家があり、空き家率は過去最高の13.6%で、7戸に1戸が空き家だ。どこの地方自治体にとっても悩ましい問題になっている。空き家は適切な管理がなされないと、防犯、防災、衛生、景観などの面から社会問題化する。
政府も空き家数の増加に歯止めを掛けようと、空き家等対策特別措置法を15年に施行した。具体的には、家屋の所有者が管理責任を全うしない場合は、市区町村が主体的に役割を果たせるようにし、行政代執行などの措置が可能となった。地元自治体は、空き家が街づくりなどの障害になる場合は、空き家の除却などを積極的に支援するとしている。
そういう中で、脇田氏の取り組みは、住民の税金を使わずに空き家となっている「障害物」を活性化して住める家にしてくれるわけで、行政にとっても頼りになる投資になっている。
このやり方は地形条件や人口動態、可処分所得など、長崎市内ならではのもので、他の地域では通用しない。脇田氏は「こうした賃貸アパート需要は10年、20年先も当然あると思うので、長崎でさらに増やしていきたい。しかし、これを踏み台にして全国に広げ、ほかのビジネスを展開するつもりはない」と話し、あくまで得意分野に集中し手堅い投資を展開していく戦略だ。
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