五輪を彩るテクノロジー

2019年12月17日

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黒井克行 (くろい・かつゆき)

ノンフィクション作家

1958年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家。人物ドキュメントやスポーツ全般にわたって執筆活動を展開。主な著書に『テンカウント』(幻冬舎文庫)、『男の引き際』(新潮新書)、『高橋尚子 夢はきっとかなう』(学研)、『日野原新老人野球団』(幻冬舎)、『指導者の条件』(新潮新書)、『ふるさと創生―北海道上士幌町のキセキ』(木楽舎)他多数。

 空前のバドミントンブームである。

 まちの市民体育館へ行けば、いつも〝満員〟の賑わいだ。コートの使用権を求めて毎月抽選に長蛇の列ができるという。人気の背景には、日本がバドミントン大国になったことが大きい。

 今や日本のバドミントン界は男女とも、しかもシングルス、ダブルスともに世界のトップを走る。特に女子ダブルスにいたっては五輪で金メダルをるよりも日本代表になる方が難しいとさえいわれている。

実証実験を繰り返し、バドミントンラケットは開発される(ミズノ提供)

 期待を担う女子シングルス世界ランキング1位(2019年12月現在)の奥原希望(のぞみ)選手も最強の〝パートナー〟を見つけ、2020年の東京五輪に挑む。

 ミズノが開発したラケットである。同社はこれまで各種スポーツ用具を提供し、特に野球やゴルフでは高い実績を残してきたが、バドミントンラケットの製造に乗り出したのは実に20年ぶりとのこと。この間のブランクは決して小さくないはずだが……。

「うちの強みは他競技の製品で開発採用した技術や経験を生かせること。たとえば、ゴルフクラブのシャフトに採用されている素材はカーボンナノチューブと炭素繊維を複合化した独自開発で、耐久性としなりの特性を持つ。これをバドミントンのラケットにも採用し、軽量でブレにくいシャフトを実現させた。選手のスイングパワーをよりダイレクトにシャトルへ伝えることを可能にした」(コンペティションスポーツ企画生産課・橋口友洋氏)

 本来、軽くすると強度に問題が生じるものだが、強い素材を使うことで解消し、軽くなった余剰分を後述する他の性能に生かすことができた。バドミントンが野球やゴルフと違うのは、飛べばいいという競技ではなく、意図的にコントロールされたシャトルを打たなければならないことだ。軽すぎても使いにくく重すぎれば振れない。重量にこだわるよりも硬さと軟らかさの調整にテクノロジーを発揮させた。

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