五輪を彩るテクノロジー

2019年10月4日

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黒井克行 (くろい・かつゆき)

ノンフィクション作家

1958年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家。人物ドキュメントやスポーツ全般にわたって執筆活動を展開。主な著書に『テンカウント』(幻冬舎文庫)、『男の引き際』(新潮新書)、『高橋尚子 夢はきっとかなう』(学研)、『日野原新老人野球団』(幻冬舎)、『指導者の条件』(新潮新書)、『ふるさと創生―北海道上士幌町のキセキ』(木楽舎)他多数。

「ヨシッ! メダル間違いなしだ」

 選手はガッツポーズ、応援団は大はしゃぎ……が、予断は許されない。

「エッ? 嘘(うそ)だろう……」

 スポーツにおける採点競技につきまとう〝天国から地獄〟である。フェアであるはずの採点が、立場や見方の違いから物議を醸すことも少なくない。これが素早く複雑な手足の動きを判定する体操となると、瞬時に正確な評価を下すのはなかなか大変で〝審判員泣かせ〟である。例えば、採点の中で重きをおく身体の部位の角度などの判定は審判員によって多少の評価が分かれることもあり、小数点以下の得点争いに微妙な影響を及ぼしかねないのだ。

富士通が開発した体操採点支援システム(同社提供)

 富士通がこの〝もどかしさ〟に世界で初めて立ち上がった。独自のレーザーセンサーを選手の身体の表面に当て、動きを三次元でとらえる。身体にセンサーを受けるためのマーカーを付けずにできるのは世界初とされ、センシングしたデータからAIで動きをデータ化し、それを採点支援に生かすことを実現したのである。

 用途は2つある。その1つが「マルチアングルビュー」だ。審判員からの「あの時の足の角度だけ見たい」とのリクエストに対し、瞬時にCG化されたモデルデータが提供され、正確な判定に生かされる。もう1つは技の難度の判定を、採点規則基準を学習したAIが技の種目と成立の可否を自動採点するというものである。

「フェアにテクノロジーが生かされるのに意味があるが、審判員の能力を高め、競技力向上にも繋(つな)がる」とプロジェクトリーダーの藤原英則氏が語る。

 例えば、競技大会だけでなく、トレーニングにも有効に活用できる。選手はそこから得られるデータから、課題の発見や技の改善を図る。審判員も講習会などで大会で解析された映像をチェックすることで判断力に磨きをかけるのである。こうした体操競技自体の進化は、ファン拡大につながることが見込まれる。

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