2024年11月22日(金)

VALUE MAKER

2020年1月19日

イベントを通じて敷居を下げる

 喜楽湯では、銭湯を「場」にして、様々なイベントを実施している。企業とのコラボレーションで企画を行い、入浴料としてではなく、様々な収入源を広げていく。初めは東京都浴場組合など既存銭湯の経営者に異端視されたが、最近は新たな取り組みとして理解してくれる幹部も増えた。

 例えば、キリンビールなどビールメーカーとコラボレーションした「銭湯×生ビール」という企画では、銭湯の休憩所に生ビールの全自動サーバーを置いて有料で販売する。風呂上がりに美味い生ビールが飲めるとあって、入浴客も増え、飲料の売り上げも増加する。企業にとっては自社製品の格好のPRになるわけだ。喜楽湯だけではなく、協力してくれる銭湯にイベントとして持ち込むのも日野さんの仕事だ。

 11月30日、東京・渋谷区の銭湯「改良湯」。フットサルの試合を終えた若者たちが、入浴に訪れた。この日は定休日で貸し切り。汗を流した後は、脱衣場に設けられた宴会場で打ち上げが行われた。改良湯は創業103年の老舗銭湯で、経営者は4代目の大和伸晃さん、46歳。渋谷の銭湯組合の会合で日野さんと知り合い、その後、10回近くイベントを開いている。

「渋谷ほっとサルカップ」と題して、フットサルをして、入浴後に改良湯の脱衣所で行われた打ち上げでの大和さん(左側)と日野さん

 「若者たちに銭湯を知ってもらうことが第一歩です」と日野さんが言う通り、イベントを通じて、銭湯への敷居を低くする効果があるわけだ。

 また、脱衣場を使った洋服の展示販売会や、「喜楽湯」や「東京銭湯」のオリジナルTシャツの販売など、様々な取り組みを始めている。喜楽湯で実験したことを東京や全国の銭湯に広げていくことで、新しいうねりを生み出そうとしているのだ。

「銭湯らしくない銭湯を狙った」改良湯の内観

 町にある銭湯が単に入浴するための施設ではなく、地域の人たちに愛され、コミュニティーの「場」としての機能を再び取り戻していく。イベントを通じて、「場づくり」の面白さに触れた若者たちが、銭湯経営に関心を持っていけば、一見、斜陽産業のような銭湯が、新たな輝きを発するに違いない。

  
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◆Wedge2020年1月号より

 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 


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