2022年11月30日(水)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年1月9日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

保安警備機能の実効性不全

 受託手荷物の万全な保安検査レベルを確保するには、検査機器のチェックインカウンター内部への移設が急務である。それまでの間は、検査済み荷物が再度乗客の手に渡った時点からカウンター預けが完了するまでの間の増員・監視体制の厳格化は欠かせない。

 しかしながら、B社の運営現状では、異なるチェックインカウンターの保安員間の相互応援協力体制ができていない。閉鎖中カウンターの保安員たちが単に暇で雑談しているだけだ。

 私が提示した質問・疑問に対して、別の保安員Dさんは「すみませんが、このような体制になっていますので、ご理解ください」との一点張りだった。さらに、現状確認用の写真に収めるべく、私がカメラを向けた時点で、保安員Dさんは、「ここは写真撮影禁止です」と制止に乗り出した。

 場所は、出発ロビーの一般エリアである(保安検査場外)。「写真撮影禁止」の標識はどこにも掲示されていない。念のため私は確認する。「写真撮影禁止の標識はどこにあるんですか」

保安D 「私が写真ダメだと言ってるんでしょう」

私 「ですから、その根拠を示してください」

保安D 「テロ防止上、写真撮影禁止です」

私 「テロ防止はわかります。そのための空港保安警備管理条例みたいな根拠があるはずですよね。それを見せてください。私はそれに従います」

保安D 「だから、私が言ってるんじゃないですか。写真はダメです。従わないと、警察を呼びますよ」

私 「そのほうがいいですね。警察官に確認したほうが分かりやすい。ぜひ、呼んでください。すぐに呼んでください」

保安D (行動なし)

私 「警察を呼んでください。待ってますよ」

保安D (行動なし)

私 「警察を呼びましたか。早く呼んでください」

 しばらくすると、別の保安員制服姿の人がやってきた。Dさんの上司と自称しているが、氏名を明かさない。Eさんとしよう。

保安E 「お客様、空港警察交番は、正面を出て右手にあります。何か確認したければ、あちらへ行ってください」

私 「話がぜんぜん違いますね。あなたの部下のDさんが警察を呼ぶと言いましたから、私がここで警察を待っているのですよ。問題の現場はここですよね」

保安E (Dさんに)「君、そう言った?」

保安E (Dさんを引っ張っていき、こそこそ話を始める)

 その後も数回、私が「警察を呼んでください」と求めたところ、ようやく警察官がやってきた。

警察 (私に)「身分証明書を見せてください」

私 (パスポートを渡す)

警察 「住所は」

私 「マレーシアの○○××」

警察 「いや、日本国内の住所をください」

私 「ありません」

警察 「何らかの住所があるはずでしょう」

私 「ありません。ないものはない」

警察 (パスポートに張られた私のマレーシア居住ビザを眺めながら)「ここになぜマレーシアの住所が書かれてないんですか」

私 「それは、マレーシア政府に聞いてください」

警察 「住所がないのが困りますね」

私 「日本人で日本国内に住所がなくて、外国に住んでいる。外国政府発行の公文書類に外国の住所が記載されていない。それだけであなたが困るなら、警察官として、しかも国際空港の警察官として失格でしょう」

警察 (しばらく黙り込む)「写真撮影の件ですが、B社の保安員の指示に従ってくださいね。次回は撮影しないように守っていただければ、今回はこれで結構です」

私 「ちょっと待ってください。この件は終わっていません。出発ロビーでの写真撮影禁止に関して、まず禁止標識が見当たりません。それから、法律根拠はどこにあるのか、それを確認したくてあなたに来てもらったのですよ。教えてください」

警察 「ですから、B社の保安警備員の指示に従ってくださいと言ってるんでしょう」

私 「その指示の法的根拠を知りたいんです。あなたがプロの警察官ですから、それを知ってるはずですから、教えてください」

警察 「言ったじゃないですか。次回撮影しなければ、今回はこれで結構です。あなたも納得したんでしょう」

私 「いいえ、納得していません。私の質問に答えていただいていませんから、納得できません。もう一回聞きます……(繰り返し)」

警察 (黙り込んで、私から離れたところで無線交信を始める、5分ほどで戻ってくる)「あの、何回も繰り返してるんですが……(繰り返し)、それで納得したでしょう」

……(「納得したでしょう」「納得していない」の繰り返し、平行線を辿る)

私 「じゃ、質問を一旦変えましょう。出発ロビーでの写真撮影禁止の法的根拠はさておいて、禁止は間違いありませんね」

警察 「完全禁止とは言っていません。写真撮影の目的と撮影の内容によります」

私 「なるほど、完全禁止ではなく、事情によっての一部規制ですね。その目的は何ですか?」

警察 「テロ対策上」

私 「そうですよね、とっても大事なことですからね。では、私が写真を撮影したかどうか、撮影したとすれば、どういう目的で撮影したか、どのような写真を撮影したか、あなた、それで分かっているんですか。分かっていないでしょう。分かっていないまま、単に『納得しましたね、次回撮影しません』というだけで、本件終了にするんですか。テロ対策と仰っているわけですから、あまりにも無責任ではありませんか。テロ対策上、このA空港は預ける荷物の保安検査に大きな安全リスクを抱えていると、この話、聞いてもらえませんか」

警察 「いや、それはちょっと別の話ですから、次回から撮影しないことで、納得してもらえませんか」

私 「ますます納得できなくなりますね。テロ対策上、写真撮影は状況によって規制するということで、私は止められた。ということは、私の撮影行為は疑わしき対象にもなり得るということですね。であれば、もっと調べるべきでしょう。警察官から『カメラを出しなさい、撮影した画像をチェックする』というべきでしょう。そうしませんか」

警察 「私はそういうことを言っていません。だから、納得していただいて、もう次回はしないということで」

私 「もう何回も繰り返しています。私は納得していません」

警察 「納得しないということは、次回も撮影するんですか?」

私 「そのときの状況次第です。撮影禁止の根拠も標識もなければ、私は撮影が自分の権利だと思っています」

警察 「困りましたね……」

私 「口先の納得だけでことが済むなら、世の中警察も要らなくなります。警察が困ったら、国民がもっと困るでしょう。違いますか」

警察 「もう結構ですから、あなたも飛行機に乗る時間でしょう。もう行って結構です」(警察と保安員たち一行が去っていく)。

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