立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年10月30日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

香港デモの組織力は凄い!

 10月20日、香港・九龍側の尖沙咀では政府未許可の大規模デモが行われる。現場視察のため、私は午前の早い時間に尖沙咀へ移動する。

 主催者が政府にデモを申請しても却下されるケースは最近続発している。以前の「原則許可」から現在の「原則不許可」へと当局の姿勢が変わった。政府の言い分としては、「デモの暴力化」という理由が挙げられていたが、デモ側からすれば、政府は対話の姿勢すら見せず、そのうえ警察の過剰暴力や最近相次ぐデモ参加者の不審死事件があって、もはや平和なデモを潰したのは政府だった。

 暴徒に襲われた民陣リーダー岑子杰氏との連帯を訴えるデモ参加者 (筆者撮影、以下同)

 現時の香港で見られるデモとは概ね3種類――集会、流動性集会、デモ。

 集会は決まった場所で行い移動しないもので、政府に許可されやすい。そこで集会の後に参加者が移動しながら変則的なデモに移行する、いわゆる「流動性集会」が最近多発している。最後に純粋なデモ。10月20日のような大規模デモだが、許可されていないため、「市民が自発的に街頭に繰り出し、練り歩く」という形が取られていた。

 20日のデモについて、香港民主派組織・民間人権陣線(民陣)の代理として民主派の4議員が政府へデモの許可申請をした。しかし、政府は「騒動激化の恐れがある」ことを理由に却下した。4議員は個人としての参加(ある意味で個人名義の主催ともいえる)を表明した。民陣の呼びかけ人である岑子杰氏が10月16日に暴徒の襲撃に遭い重傷を負い、この申請却下も相まって、デモ参加者の反抗心をさらに強め、当日は35万人が行進に加わった。

名門ペニンシュラホテル前にデモ参加者が集結する

 自発的な行進(練り歩き)なので、原則として主催者は存在しないはずだが、現場を見ると、主催者のスタッフらしき人物が多数動いている。ポスターやビラ配りから、マスクやミネラルウォーター・お菓子の配布、PR、秩序維持、参加者の誘導、警察動向情報の伝達、スパイ排除、音響、撮影、政治家(民主派)警護、救急、宗教サービスまで、きちんと役割分担が決まっていてよく機能している。特に物資供給の動線はうまく設計されている。ドキュメンタリー映画で見た2014年当時の雨傘運動に比べて、数段どころか、劇的にレベルが上がっている。

水と防護用品(マスク)を配布する担当者たち

 特筆すべきは、スパイ排除係。デモ隊に紛れ込んだ覆面警察官やその代理人がデモ参加者の個人情報を収集したり、デモ隊の動向を警察本部に報告したり、あるいは逆に警察側に暴力を振るい責任をデモ隊に転嫁したりすることを防ぐために、多数のスパイ排除担当係が活躍している。「怪しい者に気をつけよう」とデモ参加者に呼び掛けるだけでなく、直接の排除活動も行っている。

 後半戦に差し掛かったときの出来事。一部路上の投石行為が始まり、私が何度かカメラを向けたところで、後ろからやってくる男女2人に肩を叩かれ、「あなたは何ものだ」「今なにを撮影したか」と詰問された。「Press(報道陣)」の表記を着用しない一般人の撮影が目立ったらしい。「From Japan」と身分を明かすと、一気に2人の表情がほぐれて「どうぞ、ご自由に」と友好的な態度に転じる。

投石する抗議者たち

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