2024年12月22日(日)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年10月11日

香港のレストランは黄青の二色に分けられる

(Racide/gettyimages)

 香港社会の分断が進んでいる。

 発端は芸能界だった。香港デモについて有名俳優やアイドルが相次いで香港警察への支持を表明した。たとえば、ディズニー映画「ムーラン」の実写版で主演を務める女優劉亦菲(リウ・イーフェイ)が、香港デモを巡り警察への支持を表明した。これに対抗して一部のネットユーザーは「ムーラン」にボイコットするよう呼び掛けた。

 劉のほかにも、ジャッキー・チェンや黄暁明(ホアン・シャオミン)、李冰冰(リー・ビンビン)などの有名芸能人が相次いで、香港政府と警察当局への支持を表明した。芸能人がなぜ自ら政治的立場を表明するのか。一部の専門家は、中国当局は彼・彼女たちの知名度や影響力を利用して、世論を誘導する狙いがあると見ている。

 一方では、少数ながら、その反対側に立つ芸能人もいる。香港の人気歌手で民主派活動家の何韻詩(デニス・ホー)さんはその1人。彼女は国連人権理事会で演説を行ったりして精力的に活動し、2014年の雨傘運動を支持したこともあって、中国本土での活動が全て禁止されている。

 香港社会の分断は芸能界にとどまることなく、各方面に拡散している。

 香港の「黄青二色店舗分布マップ」(https://www.restart-hk.com/ShopList.html)は、香港各区域別のレストラン等の商業店舗を、民主派(黄色)と親中派(青色)に区分掲載し、リアルタイムで更新している。市民から投稿された情報を元に分類し、ランキング評価を行っている。

 黄色店舗は、デモ・民主化運動支持のポストやネット投稿だけでなく、実際にデモ参加者に無料の食事や飲料を提供したり、参加者の庇護に協力したりすることで評価を得ている一方、青色店舗は中国や香港政府・警察支持の立場を表明したり、従業員のデモ参加に妨害措置を講じたりすることで「親中派」に分類されている。

 たとえば、話題の牛丼チェーン「吉野家」に関しては、以下のようにコメント(抜粋)されている――。「吉野家のスタッフが無断で『警察批判・侮辱』の告知を打ち出したことで解雇された。同社総裁が近日、香港警察を支持する大会に参加し、香港政府の決定と行動を全力支持すると表明した……」(10月8日現在情報)

 青色店舗の傾向としては、①中国に出店・事業展開しているチェーン系列、②「商売の邪魔を排除したい」志向者、③中国本土出身者オーナー、④左派左翼と大きく4つ分類できる。

 香港事業にかかわる日本企業や日本人の姿勢もセンシティブになってきている。私の周りを見ると、立場の表明を避けて沈黙を守る人もいれば、香港デモに反対し、中にはデモ参加者を露骨に批判・非難する日本人も散見される。日本企業・日本人の場合、ほとんど上記①や②の部類に属している。遵法に対する潔癖的な固定概念もあり、経済的利益が損害されたことで不満を持ち、ないし憤慨している者が多い。


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