立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年10月11日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

悲壮感漂う「革命宣言」、共産主義との対決か?

 ここまでくると、香港当局はデモの許可をほとんど発行しなくなった。デモさせると暴力に発展するから許可しないというのが当局の言い分だが、これに対して市民側は、政府がデモを許可しないから、違法デモの強行やゲリラ戦的な集会・抗議活動しか選択肢がなくなったと主張する。

 対話が必要だが、対話の道が閉ざされている。対話しても、議論にならなければ、結論も出ない。行政長官に決定権がないからだ。現状では、警棒、催涙弾、実弾、逮捕、裁判といった手段にのみ依存しているから、デモ参加者たちの退路を断ち、違法域に追い込んでいる。これは非常に危険である。詰まるところ、革命という窮地に追い込んでいるようなものだ。

 市民運動に打ち出されたスローガン「時代革命」という言葉だが、多様な解釈ができる。革命とは、「時代に順応するため」のものか、それとも「時代を変えるため」のものか、本質的な意味が異なる。それが徐々に後者に近付くと、事態が深刻化する。

 「Give me liberty, or give me death!(自由か死か)」。香港政府の「覆面禁止法」の制定に対して、香港12校大学学生会が10月6日に声明を出し、「港共政権が『覆面禁止法』を制定し、白色テロを作り出し、法治を崩壊させ、香港における独裁統治の幕開けを宣告し、『警察社会』のさらなる浸透に乗り出した」と強く抗議した(10月6日付、仏ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)オンライン中文版記事)。

 声明最後の一節――。

 「自由か死か。香港人は自由のためなら、生死を度外視する。たかが1本の法律である『覆面禁止法』、これが人民に与えたのは恐怖ではなく、自由と尊厳を死守する決心である。大学学界は香港人に呼びかける。独裁政権に屈服しない。命をかけて戦おう。栄光が香港に戻る日まで戦い続ける」

 悲壮感漂う「革命宣言」ではないか。注目すべきは「港共政権(香港共産党政権)」という称呼。市民の分断、社会の分断、そしてイデオロギーの分断から、最終的に共産主義との対決になるのか、これから注目される。

 「覆面禁止法」の制定が発表された10月4日の夜、市民運動のスローガンは、「香港人、加油(がんばれ)」から「香港人、反抗」に変わった。

 米国ではトランプ大統領が9月24日、国連総会で演説。共産主義との闘争宣言を発した――。

 「今、われわれの国家が直面するもっとも厳しい挑戦は、社会主義という幽霊だ。社会主義は、社会を破壊するものだ。ベネズエラがわれわれに警鐘を鳴らしてくれた。社会主義と共産主義が目指すのは正義でもなければ、平等でもない。貧困脱出でもなければ、国益でもない。社会主義と共産主義が求めているのは、国益ではない。彼たちが求めているのはたった1つ、それは支配者の権力と利益だ。今日、私はもう一度繰り返す。これは既に何回も繰り返しているが、米国は永遠に社会主義国家にならないことだ。過去の1世紀、社会主義と共産主義が1億人も殺害した……」

 自由主義陣営と社会主義・共産主義陣営の対決、東西冷戦の終結は決してフィナーレではなかった。

  
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