2022年12月2日(金)

World Energy Watch

2020年1月9日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

再エネ発電で化石燃料費用は削減可能に?

 2018年日本の輸出額は81.5兆円、輸入額は82.7兆円。輸入額のうち原粗油が8.9兆円、液化天然ガス(LNG)4.7兆円、石炭2.8兆円、石油製品2.1兆円を含め、鉱物性燃料の額は19.3兆円、全輸入額の4分の1近くに達している。再エネ導入により、この金額はどれほど減るものだろうか。

 自家発を含め、日本で発電に使用されている化石燃料は、天然ガス消費量の66%、石油の11%、石炭の57%だが、石炭は鉄鋼用に使用されている高品位、価格の高い原料炭が使用量の30%を占めている。燃料用の石炭の中では発電用は81%のシェアだ。

 仮に、全ての電源が再エネに変わり、電力部門の化石燃料の消費がゼロになったとしても、節約可能な燃料代金は2018年の価格を基準にすると6兆円程度だ。太陽光を中心に電力構成比の5%程度の再エネ導入に必要であった国民負担額が2兆円を超えていることから考えれば、再エネ導入が燃料代金節約よりもはるかに大きい国民負担を招くことは明らかだ。節約という面だけにスポットライトを当て、国民負担に触れない説明は正しいのだろうか。

必要な政策は何か

 「再エネにより地域は豊かになる」。何度も聞かされてきた話だ。しかし、再エネ先進国と言われるドイツの実態、日本での費用負担の現実をみると、ほんの一部の地域だけが実現できる政策であるのは明らかだ。夢物語の話を語るのではなく、いかにエネルギーの経済性を維持しつつ、自給率をあげ、安全保障を強化するか真剣に考えることが必要となっている。

 日本の最大の問題は少子化対策だ(参照『日本が直面している最大の危機は温暖化ではなく人口減少』)。男性の所得が上昇するに従って既婚率が上がる事実からすれば、今日本にとって必要なことは、一部地域が他の支援の下で豊かになることではない。必要なことは、日本で働く人全ての収入が増える政策を見つけ実行することだ。生産性が相対的に高い、製造業、金融業などで働く人を増やす方策を探ることが今日本では必要とされる。

 現時点で再エネを導入することは、この政策実現とは相容れないどころか、電気料金の上昇を招き、製造業を主体に負担を増し、給与上昇の妨げになる可能性が高い。現実を良く見つめ問題点を洗い出し、国民に必要な情報提供をマスメディアは考える必要があるのではないか。

  
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